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発展途上国で予想外に子どもを持たない人が増加している

2025.11.29 12:00:19 Saturday

「子どもを産まない人が増えている」と聞くと、多くの人は日本やヨーロッパ、アメリカの姿を思い浮かべるかもしれません。

長時間労働、教育費の高騰、将来不安などは、いわゆる先進国の悩みであり、「発展途上国はむしろ子だくさん」というイメージを持っている人も多いはずです。

ところが、世界のデータをじっくりのぞき込んでみると、このイメージはかなり現実とズレてきています。

途上国の中にも、「将来も子どもを持つつもりがない」と答える人たちが、増え始めている傾向があるというのです。

この意外な変化に目をつけたのが、アメリカのミシガン州立大学(Michigan State University)の心理学者ザカリー・P・ニール(Zachary P. Neal)氏とジェニファー・ワトリング・ニール(Jennifer Watling Neal)氏です。

研究チームは、アフリカ、アジア、中南米など51か国で実施された国際的な人口・健康調査のデータを集中的に解析し、「子どもがいない」だけでなく「今後も子どもはいらない」とはっきり答えた人たちに注目しました。

その結果、これまで「大家族の国」とみなされてきた地域の中にも、日本や欧米に匹敵するレベルで「子どもを持たない選択」が広がっている国があることが見えてきました。

しかも、少子化傾向を示す途上国にはある共通点が隠れていたのです。

この研究の詳細は、2025年11月付けで科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されています。

Prevalence and predictors of childfree people in developing countries https://doi.org/10.1371/journal.pone.0333906

発展途上国で広がる“子どもを持たない選択”とは?

多くの人は、「子どもを持たない人が増えているのは日本や欧米の話だ」と考えています。

けれど、世界のデータを慎重に見ていくと、この前提が今まさに揺らぎ始めています。

研究チームは、アフリカやアジア、中南米を含む51か国で行われた国際調査のデータを使い、「これまで子どもがいない」「今後も子どもは欲しくない」という2つの条件を満たす人たちだけを抽出しました。

この“子どもを持たない選択をした人”のカテゴリは childfree(チャイルドフリー)と呼ばれ、将来も子どもを持たない意志を持つ点で、単に子どもがいない人とは区別されます。

すると、これまで「出生率が高い国」とされてきた地域の中にも、意外なほど childfree の人が多い国が存在することが見えてきました。

例えば、太平洋に位置するパプアニューギニアでは、未婚の15〜29歳女性の約15.6%が「子どもはいらない」と回答しています。

エチオピアでも約9%、フィリピンでは7%を超えており、日本やアメリカと比べても遜色のない割合になっているのです。

※ちなみに日本の内閣府「少子化社会対策に関する世論調査」では、20〜40代で「子どもを希望しない」と回答した人の割合は約7%程度です。なおこれは今回の論文におけるchildfreeの定義と厳密に一致した調査ではない点に注意してください。

研究チームが同じ基準で51か国の15〜29歳の未婚女性のデータを比較したところ、childfree の割合は0.3%から15.6%まで幅広く分布していました。

国によって極端に異なるこの数字には、ある興味深い法則がありました。

それは、人間開発指数(HDI:Human Development Index)と呼ばれる、教育・収入・平均寿命などを総合した指標です。

このHDIが高い国ほど、childfree の人が増えるという明確な傾向が見えてきたのです。

つまり「発展途上国」とひとまとめに表現されがちですが、これまでのイメージとは異なり、実際は途上国ごとに異なる価値観の変化がすでに進んでいるのです。

先進国だけの現象と思われてきた“子どもを持たない選択”が、実はより広い地域で静かに広がっているようです。

では、なぜ発展途上国でこのような変化が起きているのでしょうか。

また、国ごとにこれほど大きな差が生まれる理由は何なのでしょうか。今回の研究はどのような根拠から述べられているのでしょうか。これらについて次項で詳しく解説します。

次ページ 子どもを持たない選択は、なぜ途上国でも広がっているのか?

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