Credit:Open AI,ナゾロジー編集部
psychology

没入感の高いゲームクリア後の喪失感は測定可能な心理現象だった

2026.05.24 22:00:15 Sunday

夢中になっていたゲームをクリアした後、胸にぽっかり穴が空いたような感覚を覚え、その後何日もその世界のことを考えてしまう、そんな経験をした人は多いのではないでしょうか?

別のゲームを始めても気分が乗らず、「もう一度、記憶を消してあのゲームを遊びたい」という感覚は、出来の良いゲームを遊んだ後ほど浮かんできます。

こうした感覚は、世界的にゲーマーの間で語られており、海外のコミュニティではこれを「ポストゲーム・デプレッション(post-game depression)」と呼んでいます。

これは日本語に訳すと、「ゲーム終了後うつ」や「ゲームクリア後の空虚感」と表現できます。

ビデオゲームは現在、テレビやソーシャルメディアに次いで世界的に人気のある余暇活動とされ、6〜64歳の53%が定期的にゲームをしていると報告されています。

それほど多くの人がゲームに触れているにもかかわらず、ゲームを終えた後に生じる感情の変化は、これまで十分に研究されてきませんでした。

そこで、ポーランドのSWPS大学(SWPS University)人格発達研究センターに所属するカミル・ヤノヴィチ(Kamil Janowicz)氏ら研究チームは、没入感の高いゲームを終えた後の空虚感を心理学的に測定できるか調べてみました。

研究チームは、プレイヤーの感情を数値化して調べるための質問票「ポストゲーム・デプレッション尺度(Post-Game Depression Scale)」を新たに開発し、この現象がどのような心理的特徴を持つのかを検証しました。

するとこの現象は、実際心理学的にも測定が可能であり、主に4つの要素から説明できることが明らかになったのです。

この研究の詳細は、2026年1月付けで学術誌『Current Psychology』に掲載されています。

Post-video game depression: Scientists create tool to measure the phenomenon https://medicalxpress.com/news/2026-03-video-game-depression-scientists-tool.html Feeling empty after finishing a video game? Researchers say post-game depression is a real phenomenon Feeling empty after finishing a video game? Researchers say post-game depression is a real phenomenon https://www.psypost.org/feeling-empty-after-finishing-a-video-game-researchers-say-post-game-depression-is-a-real-phenomenon/
Post-game depression scale – a new measure to capture players’ experiences after finishing video games https://doi.org/10.1007/s12144-025-08515-2

ゲームの終わりは、ただの「遊び終わり」ではない

ゲームという言葉を人は区別して使いませんが、現代のゲームは、古来から続くゲームとは概念が異なり、単に得点を競うだけの娯楽ではありません。

特にロールプレイングゲーム(RPG)や物語性の強いゲームでは、プレイヤーは何十時間もかけてキャラクターを育て、仲間と旅をし、物語の選択に関わっていきます。

その体験は、映画を観るよりも、長編小説を読むより深くなりやすく、もはやその世界に転生して体験したような感覚に近くなります。

そのため、ゲームのエンディング後は「クリアできて嬉しい」という達成感だけで終わらないことがあります。

プレイヤーは、長く滞在していた世界から急に現実へ戻されたような感覚に陥りやすく、親しんできた登場人物や音楽、街並み、戦いの記憶が、しばらく頭から離れなくなります。

研究チームは、このようなゲームクリア後の空虚感が、RedditやDiscordなどのオンラインコミュニティで広く語られていることに注目しました。

しかし、これまでその感覚は主に「ゲーマーあるある」として共有されるだけで、心理学的に調査されたことはあまりありませんでした。

そこで研究チームは、成人ゲーマーを対象にした2つの調査を通じて、この現象を定量的に評価する新しい心理測定ツール「P-GDS」を開発し、その有効性を検証しました。

第1研究では、最近「自分にとって重要なゲーム」を終えた210人のプレイヤーを対象に、P-GDSの初期版をテストしました。

たとえば、終えたゲームの場面を何度も思い返すか。

ゲームの終わりを受け入れにくいと感じるか。

もう一度そのゲームを遊び直したくなるか。

ほかのゲームやメディアを楽しみにくくなるか。

こうした質問への回答を集めることで、研究チームはゲームクリア後の心の動きをより客観的に調べようとしたのです。

研究チームは、この最初の調査で、どの質問がこの現象をうまく捉えられるかを調べました。

第2研究では、別の成人ゲーマー163人を対象に、17項目に絞られた最終版P-GDSがきちんと機能するかを確認しました。

研究チームはこうした調査から、「ゲームを終えた後に、どのくらい空虚感や喪失感を抱いているか」を、数値として捉えることに成功したのです。

次ページクリア後の空虚感は4つの心理要素から成り立っていた

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