仮想世界で起きた免疫反応 - ナゾロジー

仮想世界で起きた免疫反応
仮想世界で起きた免疫反応 この研究で行われた「VRで病気の人を見る体験」や「ワクチン接種」が、実際に体の免疫細胞にどんな変化をもたらしたのかを示しています。まず左上のパネルaでは、実験の流れが描かれています。すべての参加者は最初に“健康そうな人”のアバターを見て、その直後に血液検査を受けます。その後、グループごとに「病気の人のアバターを見る」「再び健康そうなアバターを見る」「怖がっている顔のアバターを見る」など、異なるVR体験をし、もう一度血液検査を受けます。また別のグループでは、VR体験のかわりにインフルエンザワクチンを受けて血液が調べられました。つまり「病気の人を見る」だけの反応と、「実際にウイルス(ワクチン)が体に入る」反応を比べたのです。 次のパネルbは、実際にどんなふうに免疫細胞を調べたかを表しています。血液から「白血球」を分けて、さまざまな薬品や色素を使い、どの細胞がどれだけいるのかを詳しく分析しました。このとき、「自然リンパ球(ILC)」という種類の細胞に注目しました。これは体の“最前線”で敵と戦う細胞です。 パネルcは、VR体験やワクチン接種の前後で、自然リンパ球(ILC)がどのくらい増減したかをグラフで示しています。左から「健康なアバターを見た人」「病気のアバターを見た人」「怖がっているアバターを見た人」「ワクチン接種を受けた人」という順で棒グラフが並び、病気のアバターを見た人やワクチンを受けた人ではILCがはっきり増えていることがわかります。 パネルdは、自然リンパ球の“活発さ”を比べています。たんに数が増えるだけでなく、「敵が来たぞ!」と本気モードに切り替わる細胞が増えていることを意味します。ここでも、病気のアバターを見たグループとワクチンを受けたグループで活発な細胞が多くなっていました。 パネルeとfでは、同じ実験を別のグループでもう一度行い、「健康なアバター」と「病気のアバター」だけに絞って比べています。やはり病気のアバターを見た人の方が、自然リンパ球の数も活発さも高くなりました。これによって結果の信頼性がさらに高まりました。 最後のパネルgは、「自然リンパ球の数」と「活発さ」がどれだけ一緒に変化しているかを表しています。両方がセットで増える人が多いことが、グラフの点が右上がりに並んでいることでわかります。つまり、病気の人を“見るだけ”で体の防御細胞が数も働きもアップし、しかもその反応はワクチン接種とよく似ている、ということが読み取れます。/Credit:Neural anticipation of virtual infection triggers an immune response

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