騒がしい環境で「特定の音」を聞き分ける力とは?
騒がしい店内や路上、轟音が響く駅など、日常生活では他人の話し声や環境音が重なる場面が多く、必要な情報だけを聞き分けることは簡単ではありません。
この能力は選択的注意と呼ばれ、その注意力は個人差が大きいことが知られています。
過去の研究では音楽の訓練や演奏経験がある人は騒音下でも聞き分けが得意な傾向が報告されてきました。
しかし脳のどの仕組みがそれを支えているのかは十分に分かっていません。
そこで研究チームは音楽経験が選択的注意とどのように結びつくのかを実験課題と脳計測の両面から検証することにしました。
参加者は18〜49歳の男女で、合計48名。音楽経験の程度はさまざまでした。
音楽経験はGoldsmiths Musical Sophistication Indexという、音楽経験や音楽的能力を尋ねる「国際的な指標」で数値化されました。
この実験では異なる高さの2つのメロディを同時に提示しどちらか一方の音の流れに注意を向けて最後の音の変化を判断してもらいました。
他方のメロディに注意を奪われず「指定された音だけを追いかける力」を試す設計です。
また、脳活動が磁気脳波計で計測され、どの音に注意が向いているか分析されました。
ちなみに、研究は注意の働きを二つに分けて解析しています。
1つは、トップダウン型注意であり、目標や意図にもとづいて自分で集中をコントロールする働きです。
もう1つはボトムアップ型注意であり、突然の大きな音や予期しない刺激など外部からの情報によって無意識に注意が引き寄せられる働きです。
チームはこれら二つの注意が課題成績や脳活動とどのように対応するかを詳しく調べたのです。