1億年前の森から届いたメッセージ、なぜ琥珀は貴重?
琥珀は、樹木が分泌した樹脂が何百万年もの時を経て化石化したものです。
じつは、この琥珀こそが、通常なら残ることのない小さな虫や花、菌類などの「命の一瞬」を奇跡的に閉じ込めてきました。
これまでも世界各地で化石入りの琥珀は発見されてきましたが、その多くは1億年前より新しい、いわゆる“後期白亜紀”以降のものばかり。
たとえば、ミャンマーのカチン州(約9900万年前)、バルト海沿岸(約4000万年前)、日本国内では岩手県久慈市(約8600万年前)のものが有名です。
しかし、1億1500万年前、つまり「前期白亜紀」と呼ばれる時代の琥珀で、しかも大量に化石を含む例は世界的にもきわめて稀です。
なぜなら、古い時代の琥珀は地層の変動や風化によって失われやすく、現代に残ること自体が珍しいからです。
しかも前期白亜紀は、植物や生態系にとって劇的な転換期でした。
それまで地球の森を支配していた裸子植物に代わり、花や実をつける被子植物が台頭し始める“進化の大事件”の真っ只中。
この時代の琥珀を詳しく調べることができれば、私たちが現在目にする森や生態系がどのように形作られていったのか、その手がかりを得ることができるのです。