津波が運んだ「奇跡の保存庫」
今回、北海道中川町の下中川採石場から発見された琥珀の地層は、なんと深海堆積層の中にありました。
いったいなぜ、陸上の樹脂が深海まで届いたのでしょうか?
研究チームは、巨大な津波が樹脂の塊を一気に海底まで運び、そこで堆積したと推定しています。
現地調査で集められた琥珀は合計30kgにも及び、そのうち4kg分が光学顕微鏡で詳しく調べられました。
その結果、琥珀の中には驚くほど多様な生物化石が保存されていることが判明したのです。
たとえば、花粉や植物の毛状組織、ハチやダニといった昆虫や節足動物の仲間、さらに菌類など――。
これらの化石は肉眼では見えないμm(マイクロメートル)レベルの微細な構造まで、立体的に保存されています。
特にハチやダニは2個体ずつ、非常に良好な状態で発見され、その口器や感覚器の細部まで観察できました。
植物の花粉や毛も、琥珀となった樹脂を出した木の特徴を示す重要な手がかりとなります。
【実際の画像がこちら】
このような“高精細な化石保存”が可能なのは、まさに琥珀ならでは。
今回の発見は、これまで空白だった前期白亜紀の生態系を復元する「ピース」を埋める重要な成果と言えるでしょう。
また、今回調査した琥珀は、地層に含まれるごく一部にすぎません。
今後さらに大規模な調査や分析が進めば、まだ見ぬ新種の生物や、当時の生態系の全体像がより明らかになることが期待されます。
微細な構造から得られる情報は、単なる新種の発見だけでなく、太古の環境や生物同士の関係まで深く掘り下げる材料となるはずです。