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感謝で親切になっても「傍観者効果」は残る / Credit:Canva
psychology

「感謝」で人は親切になるが、”誰かが助けるだろう”の「傍観者効果」は打ち消せない

2026.08.10 06:30:25 Monday

人は感謝の念を抱くと、他人にも親切になると言われています。

それなら、感謝の気持ちを十分に持っていれば、困っている人を前にして「誰かが助けるだろう」と傍観することも減るのでしょうか。

就実大学(Shujitsu University)の研究チームが867人を対象に確かめたところ、感謝した人ほど助ける傾向は強まったものの、周囲に助けられる人が増えるほど援助しなくなる傾向は変わりませんでした。

この研究は2026年7月8日付で学術誌『Cognition and Emotion』にオンライン掲載されています。

Gratitude makes people more helpful, but it doesn’t overcome the bystander effect https://www.psypost.org/gratitude-makes-people-more-helpful-but-it-doesnt-overcome-the-bystander-effect/
Does gratitude moderate the bystander effect? A registered report https://doi.org/10.1080/02699931.2026.2699829

「感謝」の力は「誰かがやるだろう」に勝てるのか?

誰かに助けてもらったとき、「ありがたい」と感じるのはごく自然なことです。

そして心理学の研究では、この感謝の気持ちには、自分も別の誰かを助けたり、持っているものを分けたりする「向社会的行動」を促す働きがあることが知られています。

つまり感謝は、受け取った親切をその相手に返すだけでなく、その後の他者への親切にもつながる可能性があるのです。

しかし、これまでの研究の多くは、「困っている人がいて、助けられるのは自分だけ」という比較的単純な状況を扱ってきました。

現実には、自分以外にも助けられる人がいる場面が少なくありません。

そこで問題になるのが「傍観者効果(bystander effect)」です。

これは、困っている人を助けられる人が増えるほど、一人ひとりが実際に援助する可能性が下がる現象を指します。

その背景には、「自分がやらなくても誰かが助けるだろう」と考え、一人ひとりが感じる責任が薄まる「責任の分散」などがあると考えられています。

では、感謝によって人を助ける行動が増えるなら、この傍観者効果まで弱くなるのでしょうか。

研究チームはこの疑問を確かめるため、日本のクラウドソーシングサービスを通じて867人を募集しました。

参加者はランダムに、感謝条件、穏やかな感情条件、中立条件の3つに分けられます。

感謝条件では、誰かに助けてもらい心から感謝した経験を5分間思い出して書きます。

そして穏やかな感情条件では、誰かと一緒に過ごしたリラックスした経験を、中立条件では普段の朝の過ごし方を書いてもらいました。

その後、参加者には10ポイントが与えられ、0ポイントの受益者に5ポイントを渡して助けるか10ポイントをすべて手元に残すかを選んでもらいました。

ポイントは最終的に実際の報酬に反映されるため、援助を選べば自分にもコストが生じます。

さらに重要なのは、その受益者を助けられる潜在的な援助者の数が「1人」「3人」「5人」と変化したことです。

しかも相手を助けるには1人が5ポイントを渡せば十分で、複数人が援助しても余分なポイントは無駄になります。

参加者には、他の人が援助を選んだかどうかも分かりませんでした。

この実験の結果、感謝条件では全体として援助行動が増えていました。

しかし同時に、潜在的な援助者が増えるほど援助する可能性は低下し、傍観者効果も確認されました。

では、「感謝による援助の増加」と「人数が増えるほど助けなくなる傾向」は、実際にはどのような関係にあったのでしょうか。

より詳しい結果を次項で見ていきます。

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