ブサメンすぎると裁判官が同情して罪が軽くなる可能性があると判明
ブサメンすぎると裁判官が同情して罪が軽くなる可能性があると判明 / Credit:Canva
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ブサメンすぎると裁判官が同情して罪が軽くなる可能性があると判明

2025.02.26 18:00:34 Wednesday

「美人は裁判でも有利」。

これは以前から何度も耳にする俗説です。

実際、過去の心理学研究では、人は「顔が整っている=性格も良さそう」と無意識に感じやすいという結果がいくつも報告されています。

被告の見た目が良いと、「そんな悪いことしないはず」「懲役を重くするほどでもない」といった印象を持ちやすいのでは、と言われてきました。

ところが今回、コロンビアのルイス・アミゴ大学を中心にした研究チームが、「魅力が低い(いわゆる“ブサメン”)被告に対して甘い判定を下す」という新たな“逆転現象”を報告しました。

容姿端麗が得をするのかと思いきや、外見があまり魅力的でない被告が同情され、有罪判定が低くなるという衝撃的な可能性が示されたのです。

研究内容の詳細は『Psychiatry, Psychology and Law』にて発表されました。

When being unattractive is an advantage: effects of face perception on intuitive culpability judgments https://doi.org/10.1080/13218719.2023.2260847

「ブサメンだから詐欺なんてできない?」という心理

ブサメンすぎると裁判官が同情して罪が軽くなる可能性があると判明
ブサメンすぎると裁判官が同情して罪が軽くなる可能性があると判明 / Credit:Canva

本研究では、主に南米コロンビアの参加者を中心に、スペインやペルーからの参加者も含む128名(男女ほぼ同数)を対象に実験が行われました。

実験では「デート商法(ブラインドデート詐欺)」を想定したシナリオを提示し、「外見が犯行の大きなアドバンテージになり得る状況」をあえて作り出しました。

さらに、被験者には信頼度を平均的にそろえた9種類の男性顔写真(「魅力的」「普通」「不魅力」の3タイプ×各3枚)を見せ、それぞれを直感的に「有罪」「無罪」で判定させます。

無慈悲にも見た目だけで有罪と無罪が決まる状況です。

さらに半数の被験者には回答時間を8秒程度に厳しく制限し、残りの半数には制限を設けません。

このように「時間的余裕」が結果に影響するかどうかも検証されたのです。

その結果、外見が魅力的でない(魅力度が低い)人物ほど「犯行を成功させにくそう」「無罪かもしれない」という甘い判断を下される傾向が強く見られました。

しかも、時間の制限があるかどうかや、被験者自身の思考スタイル(理性的・直感的)の違いはほとんど影響しなかったといいます。

研究者たちは、この傾向を「Ugly Leniency Effect(不魅力への寛大効果)」と名付け、「魅力を使う犯罪のシナリオ(例:デート商法)に限っては、外見が整っていない人ほど有罪判定を回避しやすい」と結論づけました。

研究を主導したアントニオ・オリベラ=ラ・ローザ教授(コロンビア・ルイス・アミゴ大学)は、この“ブサメン寛大効果”を「人が外見から推測する犯罪のやりやすさ」と関連づけて説明しています。

「デート商法など“魅力的に見せる”ことが犯行手口に含まれる場合、見た目に恵まれていない人はそもそも詐欺を成立させにくいはずという思い込みが働きやすいのです。結果として、顔の魅力が低い人に対し『この人はたぶん犯人じゃないだろう』と直感的に思ってしまうのでしょう。」

アントニオ・オリベラ=ラ・ローザ教授

つまり、「可愛い子やイケメンだと騙されやすい → 犯行成功しやすい → だからこそやりそう!」というステレオタイプの裏返しが、「そこまで魅力的ではない外見の人」に“同情的”な視線を向ける要因となっているようです。

実際、過去の別の研究では、詐欺で容姿が手口の一部になり得る場合、魅力的な被告のほうがむしろ罪深いと見なされて厳しく裁かれる(“Beauty Penalty”)現象が指摘されてきました。

今回の結果はその裏返しが起こり得ることを示していると言えます。

ただし、この研究をもって「現実の裁判でも外見が冴えない被告が常に有利になる」と断定するのは早計です。

論文著者たちも以下の点を強調しています。

1つ目は、今回の実験は第一印象の直感を測定しているという点です。

実際の裁判は第一印象だけで判決が出ることはなく、審理が進むにつれ、証拠や主張のやり取りで印象が変わりうるからです。

2つ目は、対象となった犯罪が特殊だった点です。

研究においてブサメンであることの利点は、あくまで「デート商法」という、見た目が重要になりやすいシナリオに限った話となります。

そのため他の事件種類でも同じ効果が出るかは、さらなる研究が必要になるでしょう。

それでも、裁判官や陪審員が自分では気づかないうちに「見た目の印象」に左右される可能性は十分あると著者らは警鐘を鳴らします。

さらに本研究は、近年注目を集めている「ニューロロー(Neurolaw:法と脳科学の融合分野)」の観点からも意義深いとされています。

私たちの脳は、顔の印象を無意識に評価し、それを総合的な判断に組み込む性質をもっています。

オリベラ=ラ・ローザ教授も「裁判官や陪審員が感情を持つ以上、見た目による直感的な判断から完全に自由でいるのは難しい」と強調し、こうしたバイアスを減らす仕組みの導入が急務だと述べています。

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