耳で覚える? 譜面で読む?──脳科学が暴く“音楽習得”の新常識 - ナゾロジー

耳で覚える? 譜面で読む?──脳科学が暴く“音楽習得”の新常識
耳で覚える? 譜面で読む?──脳科学が暴く“音楽習得”の新常識 【パネルA:Context(Listen)条件での脳活動】 まず、パネルAは「耳で学ぶ」条件下での脳の反応を映し出しています。 ここでは、特にMultiグループ、つまり複数楽器を扱った経験がある参加者の左脳、特に前頭部が大きく活性化している様子が見て取れます。 これは、音楽のフレーズを聞いて直感的に「構造」を把握する作業が、言語の文法処理に似た左脳の働きを引き出すことを示唆しています。 一方、Monoグループでも活動は見られますが、Multiグループほど明確な左脳優位のパターンは現れていません。 【パネルB:Context(Read)条件での脳活動】 次にパネルBは、「譜面を読む」条件下の脳活動を示しています。 この条件では、両グループとも左右両側の前頭部が活発になっており、特に両側の下前頭回(F3t/F3O)の局所的な最大活性化点が確認できます。 これは、譜面という視覚情報から音を再構築し、音楽の構造を理解するために、右脳も含めた広い領域で処理が行われることを反映しています。 【パネルC:Context(Read)とContext(Listen)の直接比較】 パネルCでは、同じ被験者における「譜面を読む」条件と「耳で学ぶ」条件の違いを直接比較しています。 この比較から、譜面を用いた練習の際に、右脳の前頭部および側頭部が特に強く働いている点が浮かび上がります。 たとえば、Multiグループでは右側の上側頭回(aSTG)の活性が明確に示され、これは譜面から得られる複雑な視覚情報を補うためのサポート的な役割を担っていると考えられます。 【パネルD:SuzukiグループとOthersグループの比較】 最後にパネルDでは、幼少期から「スズキメソッド」を体験したSuzukiグループと、それ以外の訓練法を受けたOthersグループを比較しています。 ここでは、Suzukiグループにおいて、左右の前頭部や側頭部が両側ともに顕著に活性化していることが示され、これが彼らの音楽学習における独自の脳処理を反映している可能性を示唆しています。 この違いは、統計的にも有意(FDR補正P < 0.05)であることから、幼少期の訓練法が脳の反応にどれほど影響を与えるかが明らかになっています。 まとめると、FIG3は「耳で学ぶ」方法では特に左脳が効率的に働く一方、「譜面を読む」方法では右脳も加わって幅広く情報処理が行われるという、異なる脳活動パターンを直感的に示しています。 この結果は、音楽の学習が単なる聴覚情報と視覚情報の違いだけでなく、個々の訓練経験や学習スタイルによって脳の使い方が大きく変動することを示す非常に興味深い証拠と言えるでしょう。/Credit:Reiya Horisawa et al . Cerebral Cortex (2025)

脳科学のニュースbrain news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!