画像
Credit:Canva
insect

カゲロウの寿命は極端に短い!「口がなく眠る必要もない」って知ってた?

2020.12.14 07:00:47 Monday

カゲロウは数時間で死ぬように体が作られています。

はかなく飛び回るカゲロウには口がなく、腸もないため、一切のエサや水をとることができないんです。

地球上には様々な虫が存在しますが、口がない虫というのはカゲロウの他に存在しません。

また飛行速度も非常におそく、鳥・コウモリ・魚など様々な動物にとって格好の獲物になります。

魚釣りに使われる疑似的なエサの多くが、カゲロウをモデルにしていることからも、その捕食されっぷりがうかがい知れます。

そんな弱々しさやはかなさの代名詞にもなっているカゲロウ。

しかしカゲロウは3億5000万年前から地球に生き続けている、生きている化石なのです。

そして彼らが何億年もの間、種として生き残れてこれた秘訣は、まさにこの弱さにありました。

弱肉強食の自然界で弱さを武器に生き残ってきたカゲロウの生存戦略とは、いったいどんなものなのでしょうか?

カゲロウ誕生の歴史から紹介していきます!

ecospark https://www.ecospark.ca/mayfly

カゲロウは最初に飛んだ虫

カゲロウの姿
カゲロウの姿 / credit: depositphotos

近年の研究により、昆虫がうまれたのは4億8000万年前であることが明らかになっています。

地球上の種の数が劇的に増加したカンブリア爆発が起きたのが5億年前であることから、昆虫の誕生がいかに早かったかがわかります。

昆虫が誕生した当時、陸上には、やっとコケ類が増え始めたばかりであり、背の高い植物は存在していませんでした。

そんな世界で、昆虫は最初の陸上動物として生活をはじめることになります。

転機が訪れたのは4億年前。

この頃になると植物もコケだけでなく、丈のあるシダ類の先祖もあらわれはじめます。

つまり、昆虫たちの生活の場がより立体的になってきたのです。

すると、昆虫たちの中に、ハネをはやして飛び回るものたちがあらわれました。

旧翅類(きゅうしるい)と呼ばれる彼らは、地球で最初に空を飛んだ最も原始的な昆虫とされています。

現在の地球上で旧翅類に分類される虫は2グループしか存在しません。

1つは恐竜の時代に大型化したことが知られているトンボ。

そしてもう一つがカゲロウでした。

しかし近年になりトンボよりカゲロウのほうがより古い昆虫であるとされるようになり、その場合、カゲロウは最初に空を飛んだ生物の、最後の生き残りとなります。

カゲロウが成虫になるまで

カゲロウは飛ぶようになっても脱皮する唯一の虫
カゲロウは飛ぶようになっても脱皮する唯一の虫 / Credit:筑波大学

カゲロウはその寿命の短さで有名ですが、口もない生命が延々と子孫を残すことなど本当にできるのでしょうか?

答えは当然NOです。

実は数時間しか生きられないのは成虫となったカゲロウのみ。

原始的な昆虫であるカゲロウはトンボと同じく、幼虫時代を水の中で過ごします。

幼虫時代のカゲロウにはちゃんと口があり、脱皮を繰り返しながら2年ほどをかけて大きくなっていきます。

幼虫時代が寿命の大半を占めるという点では、セミに近いものがあります。

しかし、カゲロウが幼虫から成虫になる過程はセミとは比べ物にならないほど極めて特殊です。

成長しきった幼虫は水から這い出てハネのある姿に羽化して飛び回るのですが、実はさらにもう一度、脱皮します。

セミやチョウで例えるならば、抜け殻やサナギから羽化して飛び回っている状態で、さらに追加で脱皮を行うことになり、その特異さが際立ちます。

ハネがはえて飛べる状態で脱皮を行う虫はカゲロウしかいません。

なんとも奇妙な生態です。

しかし昆虫の先祖の姿により近いのは、原始的な姿を留めるカゲロウのほう。

新参者のセミやチョウのように水生時代がなく、ハネが生えるまで1回しか変化しないほうが、非オリジナルであるとも言えます。

しかしそうであるならば、昆虫の始祖はいったいどんな存在であったかが気になります。

幼い頃は水辺で過ごし、ハネがはえてたあとも脱皮を行う。

いったいどんな環境が、昆虫の祖先をそのような生活形態にさせたのでしょうか?

多くの昆虫研究者を悩ませてきたこの問題はいまだ解決されていません。

しかしカゲロウを研究することで、何かヒントがつかめるかもしれないのです。

次はカゲロウが進化ともに捨てた、とんでもない生態2つを紹介します!

カゲロウは食も眠りも捨てた

食事も睡眠も忘れて性欲に生きた一生(数時間)
食事も睡眠も忘れて性欲に生きた一生(数時間) / Credit:ナゾロジー

成虫となったカゲロウは弱くはかない存在なのはさきほど述べたとおりです。

しかし弱肉強食の世界で単に弱くあり続けることは許されません。

それはカゲロウも同じ。

3億5000万年も弱々しいまま命脈を保ってきたカゲロウには想像もつかないような強みがなければ、帳尻があわないのです。

ではその強みとは何か?

それが冒頭にも述べた、口を捨てて食べないことでした。

口がなければエサを食べられず直ぐ死ぬという圧倒的な弱さをうみだします。

しかしカゲロウはその弱さの中に活路を見出しました。

つまり、食べる必要がなければエサを探す時間も労力も、その間に天敵に襲われる危険もカットできるという険しい道です。

同様に、カゲロウは睡眠の無駄を省きました。

最新の研究によって脳がないヒドラやサンゴのような原始的な動物にも睡眠が必要であることが判明しましたが、寿命が数時間しかないカゲロウにとって睡眠は不要です。

食事と睡眠を切り捨ててまでカゲロウが求めたのは何か?

それは性欲でした。

水辺から這い出て二度の脱皮を経て成虫となったカゲロウは水面の上を飛び回りながら、文字通り寝食を忘れて交尾を繰り返します。

交尾を終えると、オスはそのまま水面に落ちて死にます。

一方、メスは水面に着地して卵を産みます。

卵は水の比重より僅かに重く、産み落とされると水底に沈んでいきます。

もちろん、このときのカゲロウは魚に取って絶好の獲物です。

しかしカゲロウは群れで一斉に成虫になって交尾をするために、何匹かは生き残って卵を投下できるのです。

先に死んで水面に浮いているオスも、デコイとしてなお役立ちます。

弱さに徹して生き延びる

弱いからこそ思いもよらない方法で生き残り勝利する
弱いからこそ思いもよらない方法で生き残り勝利する / Credit:Canva

カゲロウは弱く儚い生き物です。

しかし弱さに徹して、生物としてオキテ破りともいうべき、食と眠りの放棄を行い、全てを生殖に費やした結果、じつに3億5000万年という永きにわたる繁栄を勝ち取れたのです。

カゲロウの捨ててはならないものを捨てる生きざまは、三葉虫や恐竜とは異なり、ペルム紀と白亜紀に起きた大絶滅を生き延びることを可能にしました。

弱きに徹して強くなる。

爪も牙も毛皮も力もなかった人類が繁栄している現実からも、この奇妙な戦略はもしかしたら、とんでもない可能性の起爆剤になっているのかもしれませんね。

【編集注 2020.12.17 15:00】
タイトルを一部修正して再送しております。

カゲロウの寿命は極端に短い!「口がなく眠る必要もない」って知ってた?のコメント

穂高

カゲロウの成虫が口がないことは、小学生の頃に図鑑で読んだのをなんとなく覚えていたので、もう少し詳しく知りたいと思い読みました。
成虫後にも脱皮すること、現存する昆虫で最古に飛行したこと、口かない理由として襲われやすい食事中や睡眠中を無くして繁殖に特化していることなど、わかりやすく楽しく読めました。

濱ちゃん

涙しかない…

パロット

こども・若者時代を散々満喫して(といっても野生下の話なので常に厳しい暮らしだとは思いますが)、
最後の最後、さあてワシもそろそろあの世へ行くときじゃ
最後の一仕事じゃ!!
といった感じで天寿をまっとうするんだな〜と感心しました

まゆぴか

今日、カゲロウさんがバッグについていました。手の平に乗せて観察すると、動かなくなって…「死んだ?」と思ったら、いつのまにか脱皮してました。その後、両前脚を天に掲げて…なんだかお祈りしてるみたい…。あっという間に飛んでいきました。カゲロウさん、無事に使命果たせたかな。…私も、一生懸命生きようと思いました。

ゲスト

3億年も前から生きてる生物の大先輩。
先に滅んで同情されるのは人間の方か。

さんちゃん

弱さうえの強さを垣間見ました。しかし性欲のため、口と睡眠を捨て去るなどは、有史以来から生き残った秘訣ですかね。

ゲスト

吉野弘の散文詩「I was born」でカゲロウのことを知りました。父親が、口のないカゲロウの成虫には卵がたくさんあり、産卵してすぐに死ぬ、ということを話して聞かせた、あと、吉野弘は母が自分を産んですぐ死んだのだと知った、と書いています。生と死が対となっていることに想いを馳せたいと思います。

    トム

    私もI was bornで気になって調べました

私は 最強

かげろうがこんなに 寿命が短いと初めて知ったありがとうございます

ビックリ

昆虫の命は本当に短いですね。人間に生まれて本当に良かった。

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

0 / 1000

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

昆虫のニュースinsect news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!