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テトリスがトラウマ記憶のフラッシュバック軽減に役立つ / Credit:Canva
medical

『テトリス』でトラウマを大幅に軽減できる

2026.02.20 06:30:06 Friday

落ちものパズルの元祖である『テトリス』を知らない人はいないでしょう。

四角いブロックを回転させながら隙間にぴったりとはめ込んでいく、あのシンプルなゲームが、トラウマの治療に役立つかもしれないという研究結果が報告されました。

イギリスのケンブリッジ大学(University of Cambridge)の研究チームは、英国の医療従事者を対象にした臨床試験で、テトリスを使ったデジタル介入がトラウマ記憶のフラッシュバックを大きく減らすことを示しました。

研究結果は2026年3月号の『The Lancet Psychiatry』に収録されています。

Tetris gameplay treatment helps reduce traumatic flashbacks for frontline healthcare workers https://www.cam.ac.uk/research/news/tetris-gameplay-treatment-helps-reduce-traumatic-flashbacks-for-frontline-healthcare-workers
A digital imagery-competing task intervention for stopping intrusive memories in trauma-exposed health-care staff during the COVID-19 pandemic in the UK: a Bayesian adaptive randomised clinical trial https://doi.org/10.1016/S2215-0366(25)00397-9

フラッシュバックする「トラウマ記憶」の治療にはテトリスが効果的

心的外傷後ストレス障害(PTSDの代表的な症状の一つが「突然よみがえるトラウマ記憶」です。

衝撃的な出来事の映像が、本人の意思とは関係なく急に頭に浮かんでくる状態を指します。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、医療従事者はこうした場面に繰り返し直面しました。

英国の国民保健サービス(NHS)職員では、PTSDの有病率がパンデミック前の13%から、流行のピーク時には25%まで増えたと報告されています。

彼らは、「蘇生に失敗した患者の姿」や、「家族が悲しみに崩れ落ちる場面」が突如フラッシュバックすることに苦しんできました。

多くの人が、今も同じような状況の中で働き続けているため、トラウマからの回復が追いついていません。

従来のPTSD治療は有効ですが、専門家による複数回のセッションが必要で、トラウマ体験を詳しく言葉で語る負担もあります。

そこで研究チームは、より短時間で実施できるデジタル介入「Imagery Competing Task Intervention(ICTI)」を開発しました。

ICTIの手順はシンプルです。

まず参加者は、自分のトラウマ体験の中から特につらい場面を選び、その映像を数十秒ほど頭に思い浮かべます。

詳しく説明したり、長く思い出したりする必要はありません。

大事なのは、記憶を一度「再び動き出した状態」にすることです。

次に、研究者は「mental rotation(メンタルローテーション)」という認知スキルを教えます。

これは、頭の中で物体を回転させる力のことです。

L字型のブロックを頭の中で90度回したらどの向きになるか、実際には動かさずに想像するようなイメージです。

最後に、参加者はこのメンタルローテーションを意識しながら、テトリスを約20分間プレイします。

ふつうのようにスピードを競うのではなく、「ブロックをどの向きに回せば隙間に入るか」をゆっくり考えながら操作することが求められました。

なぜテトリスなのかというと、トラウマ記憶もテトリスも、どちらも「視覚イメージ」と「空間の把握」を強く使うからです。

の中で視空間情報を処理するワーキングメモリには容量の限界があります。

そこで、一度よみがえらせたトラウマ映像のすぐ後に、視空間的な負荷の高いテトリスを行うことで、記憶が再び固定し直される過程に割り込めるのではないか、と考えられました。

この仮説を確かめるため、研究チームは英国の医療従事者99人を対象にランダム化比較試験を行いました。

全員が仕事でトラウマとなる出来事を経験し、直近1週間にフラッシュバックが3回以上あった人たちです。

参加者は三つのグループに分けられました。

ICTIを受けるグループ、モーツァルトに関する短いポッドキャストを聞いたあとモーツァルトの音楽を20分聴くアクティブコントロール群、そして通常どおりのケアや治療を続ける通常治療群です。

その結果、4週間後のフラッシュバックの回数は、ICTI群では中央値が0.5回、対照となった二つのグループではどちらも5回前後でした。

つまり、ICTI群ではフラッシュバックが約10分の1になっていたことになります。

なぜこれほどの効果が表れたのか、詳細を見てみましょう。

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