見捨てられていた「未熟児」たち
1930年代の医療界では、未熟児が生まれると、病院側は延命措置をせず、死ぬに任せていました。
自身も未熟児として産まれた女性は「病院の医師たちは、私を助けようとはしませんでした。それはただ『この世にそぐわないから、あなたは死ぬ運命にある』といった具合です」と話しています。
しかし、そのような未熟児を救った人物こそが、マーティン・クーニー医師でした。
彼は死にゆく運命にあった6500人以上の未熟児を自身の元で預かったのです。
ところが、クーニーは医師の資格を持っていないニセ医者でした。
資格は持っていなかったものの、クーニーは生前「私は、小児科の名医であるピエール・コンスタント・ブーダンの弟子だった」とよく口にしていたそう。
彼は未熟児として産まれただけで延命措置もしない当時の医療界に、大きな怒りを抱いていました。
彼が師事していたというブーダン医師は、未熟児のための保育器を普及させた人物でもあります。
クーニーが本当にその遺志を引き継いでいたのか、あるいは世間を説得するための嘘だったのかは分かりません。
しかし彼は、現代では考えられない奇策に打って出ます。