「物語を作る」ことで記憶しやすくなると判明
人間の記憶は、ただ情報を眺めるだけでは強く残りません。
心理学では、情報の意味をしっかり考えるほど記憶が強くなることが知られています。
こうした考え方の中でよく使われてきたのが、単語を「快いか不快か」で評価する pleasantness processing です。
例えば「バラ」という単語なら「良い印象」「きれい」と感じるか、「トゲがあって危ない」と感じるかを考える、といった具合です。
一方で、近年とくに強い効果で知られてきたのが survival processingです。
参加者は「自分が見知らぬ草原に取り残され、食べ物や水を確保し、捕食者から身を守らなければならない」と想像しながら、提示された単語がその状況でどれほど役立つかを考えます。
この方法は、他の深い処理課題よりも高い記憶成績を示すことが多いことで知られています。
しかし研究者たちは、ここで別の疑問を持ちました。
人間は昔から、神話や伝承、昔話のような物語を通して知識や経験を伝えてきました。
そう考えると、物語という形式そのものが、記憶に向いた仕組みを持っていてもおかしくありません。
そこで研究チームは、単語を物語に組み込むこと自体が、強力な記憶効果を生むのではないかと考えました。
研究では4つの実験が行われ、参加者は合計で380人を超えました。
使われたのは、互いにほとんど関係のない20〜30個の名詞です。
例えば論文には「diamond(ダイヤモンド)」「carrot(ニンジン)」「chair(椅子)」「dollar(ドル)」「house(家)」といった単語が挙げられています。
参加者はそれらを覚える際に、「快・不快を考える」、「生存状況での役立ち方を考える」、あるいは「単語を使って短い物語を作る」、という条件に分けられました。
その結果はかなり明確でした。
4つの実験を通じて、物語を作った参加者は 快・不快を考えた参加者より多くの単語を思い出しました。
さらに 「物語を作る」成績は 「生存状況での役立ち方を考える」成績を比べると、実験1では 前者のほうが 後者より高い成績を示しました。
実験2、3、4では両者の差は統計的に有意ではなく、おおむね同等とみなせる結果でした。
つまり、バラバラの単語をただ眺めるのではなく、「ひとつの話」としてつなげることで、人はかなり強く覚えられる可能性が示されたのです。
では、なぜ「物語を作る」ことが記憶に役立つのでしょうか。



























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