笑顔の認識に男女差はあるのか?

子どもは日々、家族や友だち、先生など、さまざまな大人や同年代の仲間と接するなかで、相手の表情やしぐさに敏感に反応しています。
たとえば、親がにこやかに「おかえり」と迎えてくれると、子どもは安心感を抱きやすくなる一方で、もし親が怒り顔やピリピリした表情をしていれば、その日の出来事を話しにくく感じるかもしれません。
こうした「表情を読み取る能力」は、自分の気持ちを伝えたり相手と気持ちを通わせたりするうえで、大人以上に子ども時代からとても大切な役割を果たしているのです。
しかし、子どもによっては「笑顔を素直に受け取れない」「怒った顔を過度に恐れてしまう」といった違いが見られます。
これまでの研究では、恐怖や怒りなどのネガティブな表情については、不安が強い子どもほど敏感に感じとる傾向があると報告されてきました。
一方で、私たちが日常で意外と見落としがちな「幸せそうな表情」が子どもの発達やメンタルヘルスに及ぼす影響については、まだ十分に明らかになっていません。
たとえば、笑顔あふれる場面でも「どうしてあの子はうれしそうに反応しないのだろう」と不思議に思ったり、逆に「ポジティブな雰囲気を過剰に頼りすぎているのではないか」といったケースを経験したことがある方も少なくないでしょう。
今回の研究では、子どもの社会性がより深まる思春期前後に注目し、脳科学的な手法を用いて「幸せそうな表情」を受け取るときに、どのような個人差が生じるのかを探っています。
特に、不安を抱えやすい子とそうでない子ではどんな差があるのか、そして男女の違いもそこに影響を及ぼすのかを詳細に調べることが目的です。