超音波でウイルスの「外膜」を破裂させる
新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスは、「エンベロープ」と呼ばれる脂質の膜に包まれたウイルスです。
この膜は、ウイルスが細胞に侵入するために重要な構造であり、いわばウイルスにとっての防護服のようなものです。
今回、研究チームが注目したのは、この防護服を薬ではなく、音の振動で壊せないかという発想でした。
実験では、病院などで使われる超音波装置に近い仕組みを用い、3〜20メガヘルツの高周波超音波をウイルスに照射。
すると、SARS-CoV-2とH1N1のどちらでも、ウイルス粒子の形が崩れ、エンベロープが破れ、構造のまとまりが失われる様子が確認されました。
研究者は、この現象を「叫び声でウイルスと戦うようなもの」と表現しています。
音波のエネルギーがウイルス粒子に形の変化を起こし、最終的にはポップコーンのように破裂させるというのです。
この仕組みの鍵になるのが「音響共鳴」です。
物体には、それぞれ揺れやすい固有の振動があります。
ブランコを押すとき、ちょうどよいタイミングで力を加えると、少しの力でも大きく揺れるようになります。
それと似たように、超音波の周波数がウイルス粒子の構造に合うと、振動が内部で増幅され、エンベロープに機械的な負荷が蓄積します。
その結果、ウイルスの膜が変形し、最終的に破れると考えられています。
興味深いのは、この現象がウイルスの遺伝子そのものではなく、粒子の形や構造に関係している点です。
多くのエンベロープウイルスは球形に近い形をしており、この形が超音波エネルギーを吸収しやすいと考えられています。
チームは、もしウイルス粒子が三角形や四角形であれば、同じような「ポップコーン効果」は起こらないだろうと説明しています。
つまり今回の方法は、ウイルスの弱点を「遺伝子」ではなく「形」に見出した研究だと言えます。




























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