暗い性格特性「ダーク・トライアド」
ダーク・トライアドは心理学において、社会的に好ましくないとされる3つの性格特性のことを指しています。
その3つの性格特性とは、自己愛傾向(ナルシシズム)、マキャヴェリズム、サイコパシーです。
自己愛またはナルシシズムは、傲慢で自画自賛、自己陶酔の傾向を示す性格を指します。
マキャヴェリズムは、目的のためなら手段を選ばないような人を指すもので、非道徳的な行為にためらいがなく、冷淡な性格を示します。
サイコパシーあるいは精神病質は、3つの特性の中でも特に悪意のある性質で、反社会的、自己中心的で、良心の呵責なく他人を傷つけることができる性格を指します。
この3つは異なる概念ですが、互いに重複する部分があり、ひとまとめにしてダーク・トライアドと心理学では呼ばれています。
これらの反社会性パーソナリティ特性の研究には、多くの関心が寄せられていますが、それがオンラインコミュニケーション行動にどのような影響を与えるかは、ほとんど研究されていません。
ダーク・トライアドの特性と、オンライン行動の関連を明らかにすることは、ネットで問題行動を起こす人たちの背後にある心理的プロセスを研究者が理解するために役立つ可能性があります。
そこでマイアミ大学の研究チームは、大学147人の学生を対象に、アンケートによる調査を実施したのです。
このアンケートでは、27項目のダークトライアドスケールと、6つのオンラインコミュニケーション行動の評価が含まれています。
この結果、サイコパシーとマキャヴェリズムは両方とも、インターネットへの依存症状に関連していました。
これは、インターネットの利用をコントロールできなくなったり、オフラインになると禁断症状を感じたりする場合を指しています。
このことはサイコパシーやマキャヴェリズムの人が、衝動調節に苦しんでいる場合が多いという研究報告と一致しています。
またこれらの人たちは、大きな心理的リアクタンスとも関連していました。
心理的リアクタンスとは、自由を奪われたときに起きる反動のことを言います。
簡単に表現するなら「押すなよ! 絶対押すなよ!」とか言われると、押したくなってしまう心理のことです。
この心理的リアクタンスの大きさは、一部の人達が特定のメディアコンテンツに執拗に否定的な評価を行ったり、オンライン上で積極的なデモ行為を行ったりする傾向と関連していると考えられます。
次に、ナルシシズムのスコアが高い学生は、オピニオンリーダー(世論を形成しようとする行為)と自己表現行動に強く関連づいていました。
ナルシシズムの人は、ソーシャルメディアで他の人よりも頻繁に写真やステータスを更新することが示されていますが、そうした過去の調査結果と今回の結果は一致していると言います。
研究者はソーシャルメディアのプラットフォームが、そもそも自己陶酔的なコミュニケーション行動を助長する可能性がある、とも話しています。
また、ナルシシズムのスコアが高い女性は、自分を良く見せようとする傾向が高く、特にソーシャルメディア上で自分自身の匿名性を低いと見なしていることがわかりました。
今回の研究は、性別などのバランスが取れていない小さなサンプルで行われた予備的な調査に過ぎません。
確実なことを示すためにはさらなる研究が必要となりますが、インターネットへの依存度や中毒性と、ダーク・トライアドの性格特性には一定の関連性が認められるのは確かなようです。
インターネットでは、特に極端な意見や行動に走る人が目立ちますが、問題のある性格特性を助長するような仕組みをオンライン上に増やさないためにも、こうした研究は今後必要になってくるかもしれません。