食物繊維の効果とは?40万人を対象にした大規模調査

健康的な食生活の象徴ともいえる食物繊維。
私たちはこれを「便通を良くするもの」や「腸の善玉菌を増やすもの」として理解してきました。
しかし食物繊維の働きはそれだけではありません。
これまでの研究により、腸内細菌が食物繊維を分解することで短鎖脂肪酸(SCFA)という分子を作り出し、これが血圧を下げたり心臓の炎症を抑えたりする働きを持つことが分かってきました。
SCFAは主に「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」の3種類で、これらは大腸から吸収され、Gタンパク質共役受容体(GPCR)という人間の細胞表面にある”センサー”に信号を送ります。
SCFAは、GPCRを通じて抗炎症性サイトカインの分泌を促進したり、血管内皮の機能を改善したりすることで、血圧の正常化や心筋線維化の抑制に関わっているとされています。

これまでマウスを用いた実験でも、この受容体がSCFAを感知することで心臓の保護効果が得られることが示されていました。
しかし、「人間で本当に同じ効果があるのか?」「このセンサーに異常がある人もいるのでは?」という疑問は残っていました。
今回、モナシュ大学の研究者たちは、イギリスのUKバイオバンクに登録された約40万人分のゲノムデータと医療記録を解析するという、かつてない規模の調査を実施。
研究チームは、GPCR遺伝子に関する希少で病的な変異に着目しました。
これらの変異があることで、SCFAによる信号伝達が正常に行われないと仮定したのです。
参加者は、高血圧や心疾患(急性冠症候群、心不全、脳卒中)といった診断データをもとにグループ分けされ、GPCRの病t機変移を持つ人と持たない人の疾患リスクを、年齢や性別、BMI、生活習慣を考慮に入れた統計モデルで比較しました。
さらに、食物繊維の摂取量が記録されている16万人以上のサブグループでは、「十分な食物繊維を摂取しているかどうか」という条件も加味した分析が行われました。