男性がオーガズムに達するための数式を開発
今回、両氏が数理モデルを構築するために対象としたのは「男性」です。
というのも、男性は女性に比べて遥かにオーガズムに達しやすく、絶頂を迎えるまでの性的反応のサイクル単純だからだといいます。
(逆に言うと女性のオーガズムは複雑すぎるため今回は考慮しなかった)
「男性はオーガズムに達するための最適な数理モデルを構築する上で最良の出発点となる」とブリュス氏は話します。
ここでベースとなるのは、1950年代にアメリカの研究者であるマスターズとジョンソンが提唱した「性的反応の4段階」です。
これは人間が性的刺激を受けたときにどんな反応をし、どういう段階を追ってオーガズムに達するかを示したものです。
それによると男女の性的反応は以下の4段階に分けられます。
1:性的興奮を感じ始める「興奮期」:Excitement
2:興奮が一定の水準まで高まった「高原(平坦)期」:Plateau
3:興奮が絶頂に達して強い快感を伴う「オーガズム期」:Orgasm
4:絶頂が終わり、興奮が徐々に冷めていく「消退(回復)期」:Resolution
ブリュス氏とクリチコ氏は、過去数十年に及ぶデータからこの男性の性的興奮サイクルの4つの段階を分析することで数理モデルを開発することを目指しました。
参照したデータは、マスターズ・ジョンソンによる1966年の研究(600名以上の男女が実験室内で行った約1万件の性行為のデータ)や、2006年にオランダで実施された同様の研究です。
ここでは、研究に同意した男女をfMRI装置に入れて性行為をしてもらい、オーガズムに達するまでの神経学的な変化をモニタリングしています。
また両氏は、オーガズムに達するために必要な生理的および心理的な要因を含めた既存データも調査しました。
そして、これらのデータをもとにスポーツのパフォーマンス分析に用いられる数学的手法を用いて、2種類の数理モデル(心理的な側面と生理学的な側面を扱うもの)を作り出しています。
その一部が以下の画像ですが、かなり高度な数学を使っているので、私たちのほとんどは何を書いているのかさっぱりでしょう。
しかし、そこから導き出された男性へのアドバイスは誰でも理解できます。
それは両氏いわく「考えすぎるな(Don’t overthink it)」ということです。
数学モデルから導き出されたこのアドバイスは、具体的にどういうことを意味しているのでしょうか?