「水分がどれだけ体内に留まるか」を調べる

私たちが水分補給をするとき、のどの渇きを癒すことだけに意識が向きがちですが、実はどれだけ体内に水分がとどまるかも非常に重要な観点です。
登山中や長時間の作業、または医療現場のように頻繁に水分補給ができない環境では、飲んだ水分がすぐに尿として排出されてしまうのでは意味がありません。
このような実用的なニーズに応えるため、研究チームは2016年に新たな評価指標「Beverage Hydration Index(BHI)」を導入しました。
これは、血糖指数(GI)に着想を得たもので、水を基準(BHI=1.00)として、他の飲料がどれだけ水分を体内に保持するかを数値化する仕組みです。
この研究では、72名の健康な成人男性が被験者となりました。
それぞれが1リットルの水、または13種類の市販飲料を摂取し、その後4時間にわたり尿量を測定しました。
その結果、摂取した水分のうち、どれだけが体内に保持されたかが比較されました。
飲料には、スキムミルクや経口補水液、オレンジジュース、コーヒー、炭酸水など日常的に飲まれているものが含まれており、それぞれの飲料に含まれる栄養素やカフェイン、糖分、ナトリウムの量が異なっていました。

この実験において、BHIの計算は2時間後の体内水分バランスをもとに行われました。
研究チームが4時間全体ではなく2時間時点に注目した理由はいくつかあります。
まず第一に、この時点で飲料ごとの差が最も明確に現れていたことです。
第二に、4時間中に排出された尿の約82%が、2時間以内に出ていたことが挙げられます。
第三に、日常生活では2時間以内に再び飲食が行われることが多く、それ以降は初期の飲料の影響が薄れるためです。
そして第四に、2時間と4時間で算出されたBHIにほとんど差がなかったためです。
つまり、2時間時点のBHIは、科学的・統計的・実用的に最も適したタイミングであると判断されたのです。
では、最も水分保持力が高かった飲み物は何でしょうか。