一卵性双生児が出現するメカニズムは謎に包まれていた
人間の一卵性双子は謎が多い存在です。
通常、1つの受精卵は分裂を繰り返しながら1つの胚となり、1人の赤ちゃんになります。
8人に1人は、1つの受精卵が分裂時に2つの胚となり、250人に1人の割合で、2人の赤ちゃんとして生まれてきます。
8人に1人が一卵性双生児とならないのは、ほとんどの場合において、一方の胚が子宮を介して吸収されてしまうからです。
(※まれに子宮に吸収される時期が遅れて、一方が不完全に成長した状態(数センチほど)で死産する場合もあります)
しかし現在に至るまで、一卵性双生児が発生する詳細なメカニズムは不明でした。
一卵性双生児の人々のDNAの配列情報を他の人々と比べても、特に大きな差はなかったのです。
さらに夫も妻も一卵性双生児としてうまれた場合でも、子供が一卵性双子になる確率は非常に低いのです(例外的に双子の生まれやすい家系は存在する)。
この事実は、一般的な一卵性双生児の出現が「DNAの配列情報」に依存しない現象であることを示します。
しかし双子の誕生という極めて生物学的な現象に、DNAが全くかかわっていないとは考えられません。
そこで今回、アムステルダム自由大学の研究者たちは6000人の一卵性双生児のDNA情報を、塩基配列ではなく、DNAにつけられた飾り(メチル化)の位置をもとに分析しました。
この飾りは一種の化学修飾であり、付着した部分の遺伝子機能を「オフ」にする機能があります。
そのため、DNAの配列情報に依存せずに、遺伝子の働き方を変えることが可能になります。
研究者たちが、このDNAにつけられた飾りを調べると、非常に興味深い結果が明らかになりました。
一卵性双生児の人々は834個の遺伝子において、他の人々と異なる特徴的な飾りつけパターンがされていたのです。
研究者たちはこの飾りつけパターンを元に、ランダムに選ばれた人間が一卵性双生児であるかを判断できるようになりました。
また834個の遺伝子を調べると、細胞同士の接着にかかわるものが多く含まれていることが明らかになりました。
一卵性双生児は、くっついているはずであった2つに分裂した細胞がバラバラになることによって発生することが知られているため、研究者たちは細胞接着にかかわる遺伝子の飾りつけ(機能オフ)が2つの胚の出現と関連していると考えました。