「音楽だけ楽しめない人」の正体

「音楽は万人にとって喜びだ」とよく言われます。
しかしこの常識を覆すように、この10年ほどの間に、音楽だけで快感を得にくい人たちが相次いで報告されました。
彼らは純粋に音楽に対してのみ無感動であり、研究チームはこの特異な状態を「特異的音楽アネドニア(SMA)」と名付けました。
驚くべきことに、このSMAの人々は聴力に問題があるわけではなく、流れているメロディもちゃんと認識できます。
また日常生活で他の喜び――例えば冗談で笑ったり、ゲームで勝って嬉しくなったり、お小遣いをもらって喜んだり――そうした音楽以外の快感は普通に得られています。
要するに「耳も快感回路も正常なのに、音楽だけでは快感が起きにくい」という状態です。
とはいえ、なぜこのような「音楽だけ楽しめない」状態が起こるのか、当初は謎でした。
耳(聴覚)の問題でも、喜びを感じる脳の中心「報酬回路」の問題でもないとすると、原因は脳内のどこにあるのでしょうか?
そこで今回の総説では、これまでの研究成果をまとめて、特異的音楽アネドニアの「脳内メカニズム」をより詳しく説明するモデルが提案されています。
特異的音楽アネドニアの人々の脳内では、何が起きていたのでしょうか?