「瞬間的なド忘れ」に関わる記憶のタイプとは?
部屋に入ったものの何しに来たのか忘れてしまったり、ソファから重い腰を上げたのはいいが何のために立ったのかわからなくなる、などなど。
こうした「瞬間的なド忘れ」は脳の病気ではなく、誰にでも起こり得る現象です。
なぜ先ほどまで頭にあったことを忘れてしまうのでしょうか?
それを知るにはまず「記憶の仕組み」を理解する必要があります。
私たちが過去に経験した思い出や出来事はすべて「記憶(Memory)」の一語でまとめることができますが、その種類は一つではありません。
記憶には大きく分けて2つのタイプがあります。
1つ目は「長期記憶」です。
長期記憶とはその名の通り、ある程度の長いスパンから一生涯にわたって保持される記憶のことで、さらに以下の3つのカテゴリーに分けられます。
・意味記憶:言葉の意味や知識についての記憶。
家族やモノの名前であったり、「勇気」という言葉の意味であったり、「1日は24時間である」という知識についての記憶です。
・エピソード記憶:個人が経験した過去の出来事についての記憶。
「昨日はどこで誰と何を食べたか」とか「学生時代はどんな勉強をしていたか」といったエピソードについての記憶です。
また自然災害がいつ起きたかという社会的な出来事の記憶もこれに含まれます。
・手続き記憶:物事のやり方や手順についての記憶。
自動車の運転の仕方であったり、水中での泳ぎ方であったり、パソコンの使い方であったりと、身についた技術についての記憶です。
そして2つ目は「短期記憶」です。
短期記憶とは、数秒〜数時間という短い時間だけ続く記憶のことを指します。
これは今まさに取り組んでいるタスクを正常に遂行するのに必須です。
例えば、小説を読んでいるときに、前のページの文章内容を覚えていることで、物語の内容を自然と理解することができます。
また友だちに電話番号を聞き、登録するまでの数十秒間だけ覚えておくのにも短期記憶が使われます。
他にも暗算をするときなど、頭の中で一時的に数字を覚えておけるのも短期記憶のおかげです。
このように短期記憶は今取り組んでいる作業のために一時的に保持される記憶でありますが、まさにこの短期記憶こそが「瞬間的なド忘れ」に関わっているのです。