「瞬間的なド忘れ」を克服するためのヒント
こうした「瞬間的なド忘れ」は誰にでも日常的に起こり得ることなので、一生涯にわたって上手く付き合っていかなければなりません。
そこでミラー氏は先行研究のエビデンスに基づいたヒントを提示しています。
1つ目は「マルチタスクを控える」ことです。
複数の作業を同時並行で進めることは、脳の中で短期記憶が混乱する元凶となります。
イメージとして例えるなら、普通は3個のボールでジャグリングするところを10個のボールで行うようなものです。
そんなことをすれば、いくつかのボール(短期記憶)を手元から落としてしまうのは必然でしょう。
そのため、瞬間的なド忘れを防ぐにはまず、マルチタスクを意識的に回避することが大切です。
しかしマルチタスクを回避しても、先ほど言ったように、急な横やりが外から入ることで物事を忘れてしまう場合があります。
これは本人のせいではないのでどうしようもありません。
そんなときには「文脈を一から再現してみることが記憶の復元に役立つ」とミラー氏は話します。
どういう方法かというと、今やろうとしていたことをド忘れする前のシチュエーションに立ち返って、何をしようとしていたのかを辿り直してみるのです。
例えば、洗濯物を取りに行こうとしてソファから立ち上がったものの、友人からのメールが来たことでド忘れしてしまった場合。
もう一度ソファに座り直して、そのときに頭の中に抱いていた思考を辿り直してみるのです。
「まず、ソファに座ってテレビを見ていたよな…それで、ふと外を見ると陽が暮れてきていた…テレビを見始めてからだいぶ時間が経ったんだな〜と思って、何かしなければならないと思い至った…そうだ!洗濯物を取りに行こうとしたんだ!」
というふうに思考を辿り直すと、ド忘れしてしまった記憶を思い出しやすくなるようです。