画像
Credit: British Antarctic Survey(2025)
history archeology

1959年に南極で行方不明になった科学者、66年越しに遺体を発見

2025.08.13 20:00:13 Wednesday

南極の氷河が後退して露出した岩場から、1959年に消息を絶った英国の気象学者デニス・ティンク・ベル氏(Dennis ‘Tink’ Bell,当時25歳)の遺体が見つかったと報じられました。

発見したのはポーランドのヘンリク・アルクトフスキ南極基地(Henryk Arctowski Polish Antarctic Station )のチームで、場所は南極半島沖・キングジョージ島のアドミラルティ湾に面した氷河です。

遺骨はDNA鑑定により本人と確認され、長年の謎に終止符が打たれました。

氷の国の科学史に刻まれていた一つの物語が、66年を経て静かに結末へとたどり着いたのです。

Remains of British researcher lost in 1959 recovered from Antarctic glacier https://www.bas.ac.uk/media-post/remains-of-british-researcher-lost-in-1959-recovered-from-antarctic-glacier/ Body of scientist lost in 1959 found in Antarctica https://www.popsci.com/science/found-body-dennis-bell-antarctica/

遺体の発見と身元確認

発見は2025年1月19日、キングジョージ島のエコロジー氷河で行われました。

氷の後退で露出した岩場の間から、人骨とともに多数の遺品が見つかりました。

無線機器の破片、懐中電灯、スキーポール、腕時計、ナイフ、パイプの吸口など、回収された個人所持品は200点以上にのぼります。

回収物はヘンリク・アルクトフスキ南極基地へ持ち帰られ、同年2月9日から13日にかけて、考古学者・地形学者・人類学者・氷河学者による追加調査が実施されました。

こうした学際的な調査により、骨片や遺品がさらに収集され、記録が整えられました。

画像
一番右がデニス・ベル氏/ Credit: British Antarctic Survey(2025)

遺骨は英国南極観測局(BAS)により英国へ送致され、キングス・カレッジ・ロンドンの法遺伝学チームによってDNA鑑定が行われました。

生存する実兄デイビッド・ベル氏と姉ヴァレリー・ケリー氏のサンプルと照合した結果、「血縁関係がない場合よりも10億倍以上の確率で血縁といえる」との結論に至りました。

兄デイビッド氏は「66年ぶりに兄が見つかったと知らされ、妹と私は衝撃と驚きでいっぱいでした。英国南極観測局と英国南極記念財団、そして彼を家族のもとに戻すことに尽力してくれたポーランドのチームに深く感謝します」とコメントしています。

発見後、遺骨はBASの王立調査船「サー・デイビッド・アッテンボロー号」でフォークランド諸島へ運ばれ、英国南極地域の検視官に引き渡されました。

その後、空軍の支援のもとロンドンまで搬送され、正式な手続きが進められています。

BASのジェーン・フランシス局長は「これは私たちにとって感慨深い瞬間です。過酷な条件下で南極の初期科学と探検に貢献した隊員の一人であるベル氏の物語に、区切りを与える発見です」と声明を発表しました。

次ページデニス・ベルとは何者だったのか?

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

歴史・考古学のニュースhistory archeology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!