金の超球が太陽光の約9割を吸収し熱電発電を2.4倍にした
金の超球が太陽光の約9割を吸収し熱電発電を2.4倍にした / Credit:Plasmonic Supraballs for Scalable Broadband Solar Energy Harvesting
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金の超球が太陽光の約9割を吸収し熱電発電を2.4倍にした

2026.02.25 21:20:41 Wednesday

韓国の高麗大学(Korea University)などで行われた研究によって、「金のナノ粒子をぎゅっと固めたミクロサイズの超球(スープラボール)」を並べた黒いフィルムが、太陽光の主要な波長域の約9割を吸収し、市販の熱電発電モジュール(温度差で電気を生む素子)の出力と効率を従来の金ナノ粒子フィルムに比べて約2.4倍に押し上げることが示されました。

もしこの成果をうまく応用できれば、新しい半導体を発明しなくても、「コーディングを塗り替える」だけで、太陽熱電発電や太陽熱利用システムの効率をまとめて底上げできるかもしれません。

しかし金の球がなぜそれほど光を吸収できたのでしょうか?

研究内容の詳細は、2026年1月5日に『ACS Applied Materials & Interfaces』にて発表されました。

Tiny gold spheres could improve solar energy harvesting https://www.eurekalert.org/news-releases/1114216
Plasmonic Supraballs for Scalable Broadband Solar Energy Harvesting https://pubs.acs.org/action/showCitFormats?doi=10.1021/acsami.5c23149&ref=pdf

太陽光の半分が見逃されている

太陽光の半分が見逃されている
太陽光の半分が見逃されている / Credit:Plasmonic Supraballs for Scalable Broadband Solar Energy Harvesting

私たちの頭上には、毎瞬約8万〜9万テラワット規模の太陽パワーが降りそそいでいると言われます。

地球全体のエネルギー需要をはるかに超える量です。

それなのに、屋根の上の太陽電池パネルや黒い集熱板は、その恵みのかなりの部分を「見ないふり」をして流し続けています。

その理由のひとつは、太陽の中身にあります。

太陽光は、目に見える「可視光」だけでなく、人の目には見えない「近赤外線」もたくさん含まれています。

標準的な太陽光のエネルギーのうち、可視光はおおよそ半分弱、残りの半分以上を近赤外線が占めます。

ところが一般的なシリコン太陽電池は可視光の一部には強く反応できても、この近赤外線のかなりの部分を活用できていません。

コラム:太陽の“見えない光”ってどれくらいあるの?

地表に届く太陽エネルギーの内訳を(たとえば標準的な太陽光スペクトルAM1.5Gを目安に)みてみると、可視光は43%(400–700 nm)/近赤外線は52%(700–2500 nm)そして紫外線は意外にもたった5%(280–400 nm)しかありません。この数値からわかるように地表に届く光は近赤外線と呼ばれる領域にたくさんのエネルギーが詰まっています。

この「取りこぼし」を埋めるために、市販の太陽熱電発電装置(熱を電気に変えるタイプの太陽光発電)などでは表面を黒く塗る「黒いコーティング(カーボンブラック)」が使われていました。

「黒色」の物体は光を吸収しやすいからです。

より科学的に言えば、カーボンブラックは光を受けるとカーボンの原子たちが激しく揺れ、その揺れ(熱)が熱電発電モジュール(温度差で電気を生む素子)に伝わって電力へと変換されます。

とはいえ、普通の黒ペンキはまだ表面で反射する光も多く、特に近赤外線(人の目には見えないがエネルギーが大きい光)を十分には吸い切れません。

そこで次に登場したのが、金や銀のナノ粒子を使った黒いコーティング剤です。

これらの金銀のナノ粒子は粒の表面にいる電子が光の波のリズムに揺すられて共鳴を起こすことでより大きく振動します。

電子が強く揺さぶられると、そのエネルギーは最終的に粒子内部の原子の揺れに変わり、「電子のゆれ ➔ 原子のゆれ ➔ 熱」となって、その下の太陽熱電モジュールに熱が伝わり発電が強化されます。

コラム:「太陽光発電と太陽熱発電」

屋根の上のシリコンパネルが行っているのは、太陽光発電です。光のエネルギーをそのまま電気に変えるしくみで、パネルに光が当たるとシリコンの中で電子が動き、コンセントから使える電気になります。一方、太陽熱発電は、まず光を「熱」に変えその熱を使用して電気が生まれます。つまり、太陽光発電パネルは「光→電気」、太陽熱発電パネルは「光→熱→電気」という流れです。また大規模な太陽熱発電施設では「いわゆる発電パネル」ではなく大きな鏡で太陽光を集めて油や溶融塩を高温にし、その熱で水を沸かして蒸気タービンを回して発電する場合もあります。

このしくみを使うと、普通の黒ペンキよりも広い色の範囲の可視光をぐっと強く吸い込み、熱としてデバイスに送り込むことができます。

ただし、既存の金銀ナノ粒子の得意分野はどうしても可視光寄りに集中してしまい、太陽光の中で大きなエネルギーを担う近赤外線を「広い範囲で根こそぎ飲み込む」ことはまだ苦手なままでした。

そこで今回研究者たちは、「材料そのもの」ではなく「ナノ粒子の並べ方」を徹底的に設計し直し、可視光だけでなく近赤外線までまとめて飲み込む、新しい金ナノ粒子の超球構造を作れないかと考えました。

本当に並べ方の工夫だけで、発電能力をあげられるのでしょうか?

次ページ太陽光の9割を吸収できる「極小の金の球」

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