私たちの脳は連携によって不思議な同期状態を作り出す
私たち人類には、複数の個人が連携することでグループ行動を行う能力があります。
素晴らしいバンド演奏や美しいシンクロナイズドスイミングが実現するには、個人としての器用さに加えて、他人と精神を同調させるような、より高次の脳の働きが必須とされているからです。
このような精神の同調は脳科学においても興味深いテーマ(対人同期)として考えられており、既存の研究では、協同行為を行っている個人の脳波には不思議な同期が発生することが知られています。
また協同行為のパフォーマンス(成績)は、脳波の同期レベルの高さと相関していることも報告されています。
(※以前に行われた研究では、脳波の同期レベルだけを参考にして、協同行為のパフォーマンスの高さを推測することに成功しています。また個人的に親しみのある相手のほうが脳波の同期が起こりやすいことも示されています)
この結果は協同行為のパフォーマンスが単に個人の運動能力だけでなく、脳を同期させるより複雑で高次の力に依存していることを示しています。
古くから言われている「心を合わせる」などの精神的な文言にも、背後に神経科学的なメカニズムが潜んでいたと言えるでしょう。
しかし「脳の同期」が発生する条件については、まだ大きな謎となっていました。
特に、協同行為を一緒に行う相手を視覚や聴覚などで直接認識していることが重要なのか、仮想空間でのアバターでも代用が効くのか、それとも全く相手を認識できずとも協同で行為を行うだけでも自然に同期が起こるのかは、極めて大きな問題です。
(※脳の同期が相手が存在するという認識に依存するのか、協同行為そのものに依存するかは大きく違います)
そこで今回、ヘルシンキ大学の研究者たちは、オンラインゲームを用いて、お互いの姿を全く認識できない場合でも、脳の同期が起こるかどうかを確かめることにしました。