60年分・約79万人のデータを統合した「職場ストレス」分析で、「役割の曖昧さ」がトップに躍り出る
職場ストレスの研究では、長年「役割ストレス(role stressor)」という概念が重視されてきました。
これは簡単に言えば、「仕事上で求められる役割そのものがストレス源になる」という考え方です。
今回の研究では、その中でも特に代表的な3種類の役割ストレスが比較されました。
1つ目は「役割の曖昧性(role ambiguity)」です。
これは、「自分が何をすべきなのか分からない状態」を指します。
例えば、仕事の優先順位が不明だったり、上司によって指示が違ったり、評価基準が曖昧だったり、「自主的に動いて」とだけ言われたりする状況です。
2つ目は「役割の葛藤(role conflict)」です。
これは、互いに矛盾する要求を同時に受ける状態を意味します。
「急げ」と「ミスするな」を同時に求められたり、複数の上司から違う指示を受けたり、売上向上とコスト削減を同時に強く求められたりするような、“板挟み”に近いストレスです。
3つ目は「役割の過負荷(role overload)」です。
これは最もイメージしやすいストレスで、単純に仕事量が多すぎる状態を指します。
締切に追われ続けたり、人手不足によって常に業務量が限界を超えていたりするケースです。
研究チームは、「この3つは本当に同じ“ストレス”として扱ってよいのか」を検証しようとしました。
そのために研究者たちは、1964年から2024年までに発表された役割ストレス研究を徹底的に収集しました。
ただし、実際に働いている人を対象としていること、統計データが明確であること、役割ストレスを測定していることなどの条件を満たす研究だけが採用されました。
最終的に分析されたのは、515研究、588サンプル、合計78万7959人という非常に巨大なデータ群でした。
これは職場心理学分野でもかなり大規模なメタ分析です。
そして研究チームは、それぞれの役割ストレスが、バーンアウト、離職意向、心理的苦痛、健康悪化、業務パフォーマンス、組織への貢献行動などとどの程度関係しているかを、過去研究のデータを統合して比較しました。
その結果、多くの従業員や組織全体への影響において、特に大きな悪影響と結びついていたのは「役割の曖昧性」だったのです。
いったいなぜでしょうか。より詳細な結果を次項で見ていきましょう。

























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