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星の本当の明るさと見かけの明るさとは?
一番最初に、非常に遠い星との距離を調べようとしたのは18世紀の天文学者、イギリスのウィリアム・ハーシェルでした。
彼は自作の望遠鏡を使い、数百の星と地球との距離を調べ、人類初の宇宙の3次元地図を作り出そうとしたのです。
そこでハーシェルが考えたのは、「すべての星は、同じ光量(明るさ)で光っている」と仮定することでした。
「明るさは距離の二乗に反比例する」、これはハーシェルの時代でも知られていた事実です。
星の明るさが等しかった場合、見た目の明るさの違いはすべて距離の影響と考えることができました。
こうしてハーシェルは夜空でもっとも明るく見える星「シリウス」までの距離を「1シリオメートル」と定義して、これを基準に星との距離を調べ始めたのです。
例えばシリウスより9分の1の明るさの星は、シリウスの3倍距離が遠いと考えることができるので、3シリオメートルということになります。
もちろんハーシェルは星がすべて同じ明るさで輝くわけではなく、この測定は正確ではないとわかっていたでしょう。
しかし、この大雑把な仮定を用いることで、彼はこれまで未知であった宇宙の3次元的な形を明らかにしたのです。
彼はこの研究によって、星たちはまんべんなく夜空にあるのではなく、直径千シリオメートル、厚さ百シリオメートルのパンケーキ型の円盤状に地球を囲んでいるという事実を発見します。
これが人類が初めて天の川銀河の存在に気づいた瞬間でした。
ハーシェルは結局シリオメートルがどれほどの距離なのか知ることなくこの世を去りましたが、その後、フリードリヒ・ベッセルの功績によってシリウスと地球との距離が明らかになります。
ベッセルは、非常に詳細な観測によってはくちょう座61番星と地球との距離を三角法によって測定します。
三角法とは星をみたときの視差の度合いから対象との距離を調べる方法です。
ちなみに、腕を伸ばして人差し指を立てた時、右目と左目を交互に閉じてみると、指の位置がずれて見えるでしょう。そのずれの度合いを視差といいます。
ベッセルの観測では、地球が太陽を回ることで観測位置がずれること(年周視差)を利用して三角法の測定を行っています。
はくちょう座61番星との距離がわかったので、ここから61番星とシリウスの明るさの違いを比較して、シリウスの距離も明らかにされたのです。
このときの距離は現在明らかになっているものよりかなり誤差がありましたが、こうして人類は銀河の大きさまでだいたい知ることができるようになったのです。
このときのハーシェルが使った「星の本当の明るさと見かけの明るさを比較する」という考え方は、今後も宇宙の距離測定において重要なポイントになってきます。