星の温度と明るさの関係を使った距離測定
ハーシェルは星本来の明るさが、星ごとにどのように異なるかはわかりませんでした。
しかし、正確な宇宙の距離測定を行うためには、星ごとの明るさの違いを理解しなければなりません。
この問題は星の色によって解決されました。
星の輝く色は、星の表面温度によって決まります。
そのため同じ色の星は、同じような温度の星だと考えられ、星の本来の明るさも同じくらいだと考えることができるのです。
たとえば、太陽と同じような色をした星が、ずっと遠くの空に暗く輝いているとしましょう。
本来であれば遠くに見える星と太陽は同じ色なので同じ明るさだと仮定できます。しかし、距離が遠いため暗く輝いて見えるのです。
つまり見かけの明るさがどれだけ暗くなっているかということを基準に、どれだけ遠くにあるか推定できるようになりました。
この星の温度(色)と明るさの比較については、ヘルツシュプルングとラッセルという学者によって作られたHR図によって示されています。
HR図は、横軸に星の表面温度(色)、縦軸に絶対等級をとった比較グラフです。
絶対等級が星本来の明るさのことで、星を32.6光年(10パーセク)の距離に置いたときの明るさと定義されています。
太陽は地球のすぐ近くにある恒星なので、見た目の明るさは-27等級です。
しかし、明るさは距離の2乗に反比例して落ちていきます。
そのため太陽を32.6光年の位置に置いた場合、5等級の明るさとなり夜空ではほとんど目立たない星になってしまうのです。
一方、地球から見ても夜空で明るく輝いているリゲルやデネブなどは、絶対等級が-7等級近くあります。これだと地球から32.6光年の距離にあったとしても、地上に影ができるほど明るい星になることが分かります。
こうして星の色を使って、星の見かけの明るさと絶対等級がわかるようになり、星の距離を正確に推定できるようになったのです。