たった45文字のRNA分子が「自己複製コア」として動くと判明――自己複製の起源に迫る
たった45文字のRNA分子が「自己複製コア」として動くと判明――自己複製の起源に迫る / Credit:Canva
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たった45文字のRNA分子が「自己複製コア」として動くと判明――自己複製の起源に迫る

2026.02.17 19:00:12 Tuesday

「生命はどうやってこの地球に現れたのか?」という問いに、新しい“コア部品”が見つかりました。

イギリスのMRC分子生物学研究所(MRC LMB)で行われた研究によって、長さわずか45文字のRNA分子「QT45(キューティー45)」が、自分の仲間である多様なRNAたちをコピーする「コピー酵素」としての機能を持つだけでなく、そのコピー機能を自分に適応して自己複製も可能なことが示されました。

ある意味で「自分をコピーできるコピー機」として働ける複製コアとも言えるでしょう。

これまでにも、ほかのRNAを作れるRNAコピー酵素は知られていましたが、自分自身とその相補鎖の両方を「フルサイズで合成」できるRNA分子は確認されていません。

この小さな分子はQT45と名付けられ、非常にコンパクトな作りでも、生命の基礎となる複製コアの役割を果たせる可能性を示しています。

「生命のスタートを切るには巨大で複雑な分子が必要」というこれまでの常識を大きく揺さぶる結果です。

研究内容の詳細は2026年2月12日に『Science』にて発表されました。

A small polymerase ribozyme that can synthesize itself and its complementary strand https://doi.org/10.1126/science.adt2760

なぜ「コピー機」がなければ生命は始まれないのか?

地球最初の生命の遺伝情報はより扱いやすいRNAに刻まれていたと考えられています
地球最初の生命の遺伝情報はより扱いやすいRNAに刻まれていたと考えられています / Credit:Canva

私たちの日常は「コピー」に支えられています。

スマホの写真、宿題のデータ、クラウドのバックアップ。

もしコピー機能がなければ、少しのミスや事故で情報はすぐ消えてしまいます。

実は、生命も同じです。

体の中では、細胞が自分のコピーを作り続けているから、私たちは生き続けています。

では、最初の生命はどうやって「コピー機能」を手に入れたのでしょうか。

DNAやタンパク質が登場する前、もっと原始的な時代には、RNA(リボ核酸:遺伝情報を運ぶひも状の分子)が情報の保存と化学反応の両方を担っていた、という考えがあります。

これが「RNAワールド仮説(生命はRNAだけの世界から始まったとする説)」です。

この仮説では、どこかのタイミングで、RNAの鎖にコピー能力がうまれ、それが遺伝子の自己複製サイクルを回し始めたと考えられています。

ところが、これまで見つかってきたRNAコピー酵素たちは、どれも150〜300文字クラスの「分厚い仕様書」のような分子でした。

さらにこれらの大型コピー機は、肝心の「自分自身のコピー」はできません。

しかも、そんな巨大で複雑な分子が、原始の地球で自然にできるとは考えにくい、という大きなツッコミもありました。

実験室や鉱物表面などで自然にできたと報告されているRNAは、もっと短い鎖が中心だからです。

現在存在している生命たちが複雑なRNAを製造できる最上級のフランス料理シェフだとしたら、原始の地球環境が作れるRNAは「おにぎり」程度の単純なものに過ぎなかったわけです。

この「フルコース問題」をどう乗り越えるかが、RNAワールドの最大の弱点でした。

そこで研究者たちが考えたのは、「最初からフルコースを狙うのをやめて、とにかく一番小さな“おにぎり級コピー機”を探そう」という方針です。

言ってみれば、原始スープの中で無数の配列が生まれては消える「ガチャ」を、試験管の中で再現したようなものです。

しかし、そんな偶然に任せた製造法で、複製酵素的に働きつつさらに自己も複製できる複製コアのような配列はできるのでしょうか?

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