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水道水から「脳食いアメーバ」が発見される / Credit:Canva
biology

致死率97%の「脳食いアメーバ」が水道水から発見される

2025.08.21 11:30:00 Thursday

「安全だと思っていた水道水を利用して死ぬ」

そんな恐ろしい結果を連想させる出来事がオーストラリアで起こりました。

2025年8月、オーストラリアのクイーンズランド州で、致死率97%を誇る「脳食いアメーバ」ことフォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)が水道水から検出されたという発表がありました。

水道水からの検出という極めて稀なケースで、地域住民に衝撃が走っています。

このアメーバはどこにでもいるような水に潜み、私たちの命をあっという間に奪っていくのです。

‘Brain-eating amoeba’ with 97% fatality rate found in tap water https://newatlas.com/infectious-diseases/brain-eating-amoeba-water/ Potentially deadly brain-eating amoeba found in Charleville, Augathella’s water supply https://www.abc.net.au/news/2025-08-11/naegleria-fowleri-murweh-shire-rural-queensland-drinking-water/105636078

「脳食いアメーバ」とは?感染するとどうなる?

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フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)。左から右へと変化していく / Credit:Wikipedia Commons

を食べるアメーバ」と聞くと、まるでホラー映画のように思えるかもしれません。

しかしそれは架空の存在ではなく、実在する微生物なのです。

この生物の正式名称はフォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)

原生生物に分類されるアメーバの一種で、ふだんは温かい淡や湿った土壌に静かに存在しています。

彼らの主な目的は“脳を食べること”ではありません。

本来は細菌を餌として生きており、人間を狙う意図はありません。

しかし、偶然に人間の鼻腔に入り込んでしまうと話は別です。

フォーラーネグレリアは、鼻から侵入し、神経を経由しながら脳内に入り込むと考えられています。

そして一旦脳に入ると、神経細胞やグリア細胞にまとわりつき、酵素で細胞膜を溶かしたうえで、細胞ごと取り込んで分解します。

“食べる”という表現がまさに当てはまる恐ろしいプロセスであり、これが「脳食いアメーバ」と呼ばれる所以です。

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原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)では、強烈な頭痛を経験し、そのほとんどで10日以内に死亡する / Credit:Canva

このアメーバによる感染症は原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)と呼ばれ、発症すると急速に脳が腫れ上がり、強烈な頭痛、発熱、幻覚、錯乱、さらには昏睡状態へと至ります。

そしてそのほとんどが、7〜10日以内に死亡するという極めて致命的な経過を辿ります。

アメリカのCDC(疾病予防管理センター)によると、1962年から2024年までの間に167件の感染が報告されています。

致死率はおよそ97%とされ、世界でも最も致命的な感染症のひとつです。

このように、「脳食いアメーバ」は特定の地域に限定されず、世界中の温かい淡水環境に存在するのです。

そして今回、オーストラリアの“安全なはずの水道水”から検出されたことにより、この脅威はさらなる注目を集めています。

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