ソリを引くのに適した5つの理由
防寒能力
トナカイは北極圏に生息しており、冬の夜長にはマイナス30℃を下回ることもあります。
しかし、トナカイの毛皮は、一般的な哺乳類が1枚であるのに対し、表面の体毛の下に密集した毛が生えそろっており、2枚になっています。
また、毛の密度は、1センチ四方に2000本もあり、人間の髪の毛の約10倍です。
この二重の層が空気を閉じ込め、トナカイの熱を逃がさず、雪が地肌に到達して冷やすのを防ぐ断熱材のような働きをします。
そのため、トナカイは北極でサンタと一緒にいても、クリスマスイブの夜に世界中を旅していても、暖かさを保つことができるのでしょう。
それから、トナカイは優れた熱交換器を体内に備えており、熱を再利用することで心臓をそれほど働かせる必要がありません。
心臓に血液を送る動脈と静脈が絡み合っていて、温かい動脈血の熱を冷たい静脈血に渡すことができます。
こうしてエネルギーを節約しつつ、体温を維持できるために、寒い場所でも平気なのです。
食料問題
トナカイが冬に食べる主なものは、ハナゴケ(reindeer lichen)です。
ハナゴケは、藻類と菌類が共生してできた地衣類で、耐寒性の非常に高いため、冷たい気候でも繁殖できます。
特に北極圏では、他の植物に比べて地衣類が豊富で、トナカイがどこに行っても見つけられる理想的な食料源です。
そのため、トナカイは食料がないときの貯蓄として体脂肪を蓄える必要がありません。
また、トナカイは哺乳類の中で唯一、特殊な腸内細菌によって地衣類を消化できる動物でもあります。
夜目の利く視力
冬場の北極は日照時間が短いため、トナカイたちは、暗闇の中でもできるだけ多くのものを見ることができるように進化してきました。
トナカイの目は冬になると金色から青色に変わって、わずかな光をより多く取り込むようになり、視力を向上させます。
季節変化するトナカイの目の色の写真はこちらから。
人間には不可能な紫外線の中でも、ものを見ることができるのです。
これは鳥や昆虫では当たり前ですが、哺乳類ではトナカイにしかできません。
つまり、サンタが見えないような暗闇の中で、トナカイは安全な道しるべとなるのです。
安定性
トナカイは、雪の中でも沈んだり凍傷になったりせずに歩くために、三日月型の幅広のヒヅメを進化させました。
このヒヅメは安定性を保つだけでなく、雪の下にある地衣類を掘り起こすためのシャベルの役割も果たします。
また、冬の間は縮んで硬くなり、トナカイはヒヅメの先端部だけで歩けるようになります。
そのおかげで、冷たい地面にさらされる面積を減らすと同時に、ヒヅメの縁が氷や雪に食い込み、スリップを防いでいるのです。
移動力
トナカイは、シカ科動物の中で唯一家畜化された種であり、石器時代から人々はトナカイを使って雪面を移動してきました。
馬のように背中に乗ったり、サンタのように小さな群れでソリを走らせたりしたのです。
野生のトナカイは年間5000キロも移動し、1日に55キロも移動することがあります。
しかも、その速さは時速80キロに達するという。
この長距離移動力とスピードは、雪の降りしきる場所をすばやく移動するのに打ってつけなのです。
また、家畜化されて久しく、人との付き合いも長いため、ソリを引くことにも慣れています。
以上5つの理由から、サンタのソリを引くのはトナカイ以外に考えられないでしょう。