なぜ「自分を許す」のは難しい?

人生では誰でも失敗や過ちを犯します。
周囲から「自分を許して前に進むことが大事だ」とよく言われますが、それが頭で分かっていても、実際には自分を許せず何年も罪悪感や恥の念に苦しみ続ける人も少なくありません。
こうした罪悪感や自己非難の感情が長引くことは、先行研究でも心の健康に悪影響を及ぼし、うつ病や不安障害など様々な心の病の一因になると報告されています。
しかし、「なぜ自分だけは許せないのか?」という問いに対して、心理学はまだ完全な答えを出せていませんでした。
なぜなら、自己許しに関する従来の研究は、アンケート調査などの数量的(量的)な手法に偏っており、人々の内面にある複雑で揺れ動く心のプロセスを十分に捉えきれていなかったからです。
そこで今回、オーストラリア・フリンダース大学を中心とする研究チームはアプローチを変えました。
自分を許せずにいる人々と、自分を許すことができた人々、それぞれの生の体験談を自由記述で集め、質的手法であるテーマ分析(共通パターンを見つけ出す方法)を行い、「自分を許すことが難しい理由」を探ったのです。