当時、世界最古の樹木だった「プロメテウス」とは?
プロメテウスは、アメリカ・ネバダ州のグレートベースン国立公園周辺に生育していた、
Pinus longaevaという樹種の1本です。
Pinus longaevaは、世界で最も長寿な樹木の一つとして知られています。
標高の高い山岳地帯という、乾燥して寒さの厳しい環境に適応し、極めてゆっくりと成長することで、非常に高密度で腐りにくい木材をつくります。
その結果、風雨や菌類、昆虫の影響を受けにくく、長期間にわたって生存し続けることができるのです。
この樹種の寿命を特別なものにしている要因の一つが、「Sectored architecture」と呼ばれる体のつくりです。
Pinus longaevaでは、根と幹が部分ごとに対応しており、ある根が機能を失っても、その上に対応する幹の一部だけが枯れ、他の部分は生き続けます。
そのため、木の大半が枯死しているように見えても、細い帯状の樹皮だけで数千年生存している個体が珍しくありません。
こうした特徴から、Pinus longaevaは「生きた気候記録」である可能性があります。
年輪には、その年の気温や降水量などの環境条件が刻まれており、数千年分の気候変動を読み取ることができるからです。
そして、あるPinus longaevaは「プロメテウス」という名前が付けられました。
この名は、ギリシャ神話に登場するプロメテウスに由来し、人類に火、すなわち知識をもたらした存在として知られています。
この木もまた、年輪を通じて人類に過去の気候や時間の情報を提供する存在だったことから、象徴的にこの名で呼ばれているのです。
ちなみに、通常、このような古木を調べる際には、「インクリメントボーラー」と呼ばれる器具を使い、鉛筆ほどの太さの木材を円筒状に抜き取ります。
この方法で得られる年輪コアを用いれば、木を生かしたまま内部の年輪を解析することができます。
しかし、この極めて貴重なPinus longaeva「プロメテウス」は、1964年、科学的調査の過程で伐採されてしまいます。
なぜそのような事態が起きたのでしょうか。次項で詳しく解説します。


























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