悪いイメージの多いセイタカアワダチソウ
セイタカアワダチソウは侵略的外来種に指定されており、ススキなどに取って代わって繁殖する上、背も大きいため威圧感があってあまり良いイメージを持っている人は少ないかもしれません。
ただ、私たちにとってはもはや身近な植物であり、子供の頃から近所の空き地や河川敷で見慣れた親しみ深い植物なのも確かでしょう。
彼らは忌むべき、悪しき植物なのでしょうか? 実のところ、そんな嫌われるほど悪い植物でもないかもしれません。
花粉症の原因という濡れ衣の被害者
セイタカアワダチソウは、見た目がブタクサに似ているために、「すっごい花粉飛ばしそう」というイメージを持つ人が多いようです。
しかし彼らは花粉を飛ばさず、虫を媒介にして受粉を行う虫媒花と呼ばれる種類の植物です。
風に乗せて花粉をばらまくタイプは風媒花と呼びます。そのためセイタカアワダチソウは花粉のバラマキ犯ではないのです。
だから花粉症の人たちが、セイタカアワダチソウを見て、あらぬ誤解で敵意を向けないようにしてあげましょう。
敵を毒殺するアレロパシー効果を起こす植物
植物が化学物質を放出し環境に影響を与えることをアレロパシー(Allelopathy)と呼びます。
これにはバジルとトマトを一緒に植えるとトマトが甘くなるなどポジティブな効果を指す場合もありますが、逆に他の植物の成長を阻害する毒の放出などネガティブな効果を指す場合もあります。
そしてセイタカアワダチソウは負のアレロパシーを有する植物です。
彼らは根から「cis-DME」という化学物質を放出し、これがイネやススキの成長を阻害して、セイタカアワダチソウの勢力圏を拡大する一因なのです。
それを聞くと「なんて嫌な植物だ」と思うかもしれません。
ところが、この「cis-DME」はセイタカアワダチソウにとっても有害な物質なのです。
この化学物質の土中濃度が上がっていくと、セイタカアワダチソウ自身に対しても強い発芽障害が起きて自身の繁殖も邪魔してしまいます。
結果、一時期は他の植物を駆逐して盛大に繁殖していたのに、しばらくするとセイタカアワダチソウは数を減らして、ススキに再び勢力を巻き返されたりします。
これを聞くと、なんだか間抜けな悪役のようで憎めない感じもします。
ススキ野だった空き地がセイタカアワダチソウに取って代わられていた。だけど、気がついたらまた元のススキ野に戻っていた。
ススキも何を言っているのかわからねえだろうが、俺も何をされたのか分からねえと思っているかもしれません。
このためセイタカアワダチソウは爆発的な繁殖力で、在来種を脅かす危険な存在ではありますが、長い期間観察していると、そうでもなかったりします。
もし散歩中に彼らを眺めることがあったら、今回の話を思い出して植物の勢力図がどのように変化していくか、観察してみると面白いかもしれません。
このためセイタカアワダチソウの繁殖に悩んでいる人は、彼らが自分の毒で弱ってきたときを狙って駆除すると効果的かもしれません。
セイタカアワダチソウが日本に入ってきたのは明治の頃で、ミツバチなどの虫たちにとってはもはや貴重な蜜源にもなっています。
見慣れたススキの景色が彼らに取って代われれたら確かにショックですが、そんなに嫌わないであげてもいいかもしれません。
花粉症の原因じゃないかと疑いの目を向けられたり、侵略的外来種と言われつつ最終的に自分の毒でススキに負けてしまう、そんな間抜けなセイタカアワダチソウを見かけたら温かい目で見守ってあげましょう。