近い将来、2度目の「バナナの終末」が生じるかも
リンゴなどと同じように、バナナにも多くの種類が存在します。
例えば、加熱料理される大きな「プランテン」、赤茶色の皮をした「モラード」、小ぶりで皮が薄い「ラルンダン」などです。
しかし、一般的に食用として日本で流通しているバナナは実のところほぼ一種類しかありません。
そのバナナとは、キャベンディッシュ(学名:Musa acuminata)です。
キャベンディッシュは世界で生産されるバナナのほぼ半数であり、国際取引されるバナナのほとんどを占めています。
そのためほとんどの国のスーパーにはキャベンディッシュ1種しか並んでおらず、グローバルインフラ(冷蔵輸送、熟成を遅らせるホルモン剤、輸送箱)も、キャベンディッシュに合わせて固定化されています。
そのためキャベンディッシュは、「世界のバナナ」として確立されており、それ以外の種を世界に広めるのは難しい状況なのです。
しかし、そんなキャベンディッシュに危機が迫っています。
フザリウム属の病原菌の寄生によって生じる「バナナパナマ病」によって、多くのキャベンディッシュが被害を受けているのです。
この病気に感染すると、葉が変色したり萎れたりし、最終的には枯れて死んでしまいます。
さらに悪いことに、世界中のキャベンディッシュは、同一の遺伝子型を持つ「クローン」です。
キャベンディッシュの生産では、花粉を用いる代わりに茎や根の一部を植え付けたり、茎の根元から出てくる新芽を使って個体を増やしたりする「無性生殖」を行っています。
そのため、1つのキャベンディッシュがバナナパナマ病にかかるということは、世界中のすべてのキャベンディッシュが感染するということであり、感染が広まれば種としての全滅もあり得ます。
バナナにとっては終末世界となってしまい、まさに「バナナゲドン」であり、「バナナ黙示録」です。
ちなみに、1950年代には、それまで世界で主流のバナナだった「グロスミッチェル」が、同じくバナナパナマ病で壊滅しました。
バナナゲドンは過去に1度生じていたのです。
そして当時、病原菌に耐性を持っていたキャベンディッシュが世界に広まることになったという経緯があります。
しかし先ほど触れたように、現在では、病原菌に耐性のあるはずのキャベンディッシュが、新しいタイプのバナナパナマ病によって、大きな被害を受けています。
近い将来、バナナに2度目の終末が訪れるかもしれません。
そんな中、マー氏ら研究チームは、一筋の希望を見出しました。