ガラパゴスの野生トマトが持ち始めた「古代の毒」
トマト、ナス、ジャガイモなどを含む「ナス科」の植物は、もともと自衛のために「アルカロイド」と呼ばれる苦味のある毒成分を作る性質を持っています。
ガラパゴス諸島は捕食者の少ない動物の楽園として知られていますが、植物にとっては必ずしもそうではありません。
したがって、アルカロイドを生産する必要性があったのです。
今回、ガラパゴス諸島の野生トマト(学名:Solanum cheesmaniae)が注目されたのは、それらが現代のトマトでは見られない古いタイプのアルカロイドを生成していたためでした。
ガラパゴスの野生トマトは、南米の祖先から派生し、鳥によって運ばれてきたと考えられています。

アルカロイドには2つの型があり、一般にトマトやジャガイモは「25S型」、ナスは「25R型」と呼ばれる分子構造をしています。
どちらも同じような原子でできていながら、立体構造が少しだけ違うだけで、性質が大きく異なるのです。
今日のトマトはどれも25S型のアルカロイドを作るはずなのに、ガラパゴス諸島の西部、特に若い火山島に生えている野生トマトは、驚くべきことにナス型の「25R型」アルカロイドを作っていたのです。
これは南米に自生していた祖先のトマトで確認されているものと同じでした。
これに受けて、研究者は「現代のトマトでは何百万年も前に失われたはずの「古代の毒」が、環境に合わせてふたたび蘇った」と説明し、進化の巻き戻しが起こっている可能性が高いと指摘します。
研究者はこれを「逆進化(リバース・エボリューション)」と呼びました。
では、ガラパゴスの野生トマトはどのように逆進化を行ったのでしょうか?