画像
緑色に光る木材 / Credit:Francis W. M. R. Schwarze(EMPA)_How to make wood glow(2024)
plants

【暗闇で光る魔法の木材】菌類の生物発光を付与することに成功

2024.12.07 14:00:58 Saturday

自然界にはキノコやイカ、ホタルなど光を発する生物が存在します。

もし、加工が可能な「木」や「木材」に生物発光を付与できるなら、私たちの生活空間はより魅力的なものとなるかもしれません。

例えば、「暗闇で光る机や椅子」「真っ暗な公園の中で輝く木の掲示板」「道筋を照らす木造フェンス」「夜に輝く木製アクセサリー」などを作ることができるでしょう。

スイス連邦材料試験研究所(EMPA)に所属するフランシス・シュワルツ氏ら研究チームは、木材と生きた菌類を組み合わせることにより、「暗闇で光る木材」を開発することに成功しました。

研究の詳細は2024年9月12日付の学術誌『Advanced Science』に掲載されました。

How to make wood glow https://www.empa.ch/web/s604/eq86-leuchtholz Glow-in-the-dark wood passively lights homes or parks https://newatlas.com/materials/glow-in-the-dark-wood/
Taming the Production of Bioluminescent Wood Using the White Rot Fungus Desarmillaria Tabescens https://doi.org/10.1002/advs.202403215

昔から知られていた自然界の「光る木材」

画像
生物発光を示すキノコ / Credit:Wikipedia Commons

光るキノコやイカが存在することはよく知られています。

では、光る「木」は自然界に存在するのでしょうか。

今のところ、木そのものが生物発光を示す例は見つかっていません。

ただし、生物発光を示すが腐朽した木に取り付き、まるで木が光っているかのように見せる事例はあります。

こうした例は18世紀の鉱山労働者によって確認されており、彼らは光る木の棒を松明の代わりとして扱っていました。

そして1900年代には、この光が枯木や生木に発生するナラタケ属(学名:Armillaria)によって生じていることが確認されたのです。

このような、木材に生息する特定の菌類が放つ微弱な光は、以前から「フォックスファイア(Foxfire)」と呼ばれており、その名は「偽」を意味する古いフランス語の「Faux」に由来していると考えられています。

ちなみにもっと過去には、ギリシャの哲学者「アリストテレス(紀元前384年-322年)」と古代ローマの博物学者「大プリニウス(紀元23年-79年)」も、フォックスファイアについて言及しており、これが2000年以上も前から知られていた現象だと分かります。

画像
顕微鏡で観察した菌糸。木材のリグニンを分解することで、ナラタケ属の菌糸束は緑色に光る / Credit:Francis W. M. R. Schwarze(EMPA)_How to make wood glow(2024)

では、ナラタケ属はどのようにして枯木や木材を発光させるのでしょうか。

ナラタケ属は木材を白く変色させる白色腐朽菌であり、木材中のリグニン(植物の細胞壁を構成する主要成分)を分解する能力があります。

そして一部の種では、リグニンの分解によって生成される特定の成分が、発光物質「ルシフェリン」に変換されるため、その種の菌糸束が緑色に光ります。

つまり、ナラタケ属の菌は木材のリグニンをエサに緑の光を発するわけです。

ナラタケ属に侵食された木は暗闇の中で緑色に光るため、夜の森で最初にこれを見つけた人は、さぞ驚いたに違いありません。

今回、シュワルツ氏ら研究チームは、この現象を応用し、研究室の中で光る木材を開発することに成功しました。

次ページ緑色に光る「木材と菌類のハイブリッド」の開発に成功

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

植物のニュースplants news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!