緑色に光る「木材と菌類のハイブリッド」の開発に成功
研究チームは、人工的に「光る木材」を生み出すために、自然界で光るいくつかのキノコを分析し、その遺伝子を解読しました。
また光る木材に向いている木材の種類も調べました。
その結果、最も効果的な組み合わせは、ナラタケ属の一種「ナラタケモドキ(学名:Armillaria tabescens)」と「バルサ材(学名:Ochroma pyramidale)」だと分かりました。
またバルサ材の中で、ナラタケモドキを十分に成長させるには、湿った環境が必要であることも分かりました。
研究チームは図のように、バルサ材のブロックに大量の水を吸収させた後、水性の培地に移して、そこで生きたナラタケモドキがバルサ材に定着するよう促しました。
そしてこの環境で3カ月間培養することで、最大の光度が得られると分かりました。
この間、バルサ材は重量の8倍もの水分を吸収し、培養後は空気(酸素)にさらされることで発光が始まります。
実験では、この光る木材は560nmの波長の光を放っており、最大10日間光り続けました。
そして気になるのは、「菌が木材のリグニンを分解する」という点です。
研究チームがこの点も観察と分析を行ったところ、確かにバルサ材内部のリグニンは分解されていきました。
リグニンは植物の剛性と安定性を担っているため、光る木材の強度の劣化が気になるところです。
しかし研究チームは、セルロース(植物繊維の主成分)は分解されずに残るため、「木材全体の安定性は低下しない」と主張しています。
リグニンが分解されたとしても、他の成分により、木材としての強度をある程度保つことができるのでしょう。
今回の研究では、木材と菌類の組み合わせにより、人工的に光る木材を作り出すことに成功しています。
ただこれは実験段階の話であり実用にはまだ遠く、研究チームは今後、光る木材の強度と寿命を高めていきたいと考えています。
こうした研究が上手くいくなら、将来、「暗闇で光る机や椅子」「道筋を照らす木造フェンス」などオシャレで不思議なアイテムを作ることができるかもしれません。