パクチーとコリアンダーは同じ植物
先に断りなく「パクチー(コリアンダー)」と表記しましたが、2つは同じ植物を指します。
地中海沿岸を原産地とするセリ科の一年草で、葉や茎はハーブ(香草)として、乾燥させた種子はスパイスとして使用されます。
パクチーはタイ語でコリアンダーを意味し、日本では主に香草として使うときに「パクチー」と呼ばれることが多いです。
反対にコリアンダーというと、カレーなどに入れるスパイスとして使うときの呼び名となっています。
以下では表記を「パクチー」に揃えていますが、ここには「コリアンダー」も含むものとお考えください。
石鹸みたいな匂いの正体は「アルデヒド」
パクチーは非常に古くから食用や薬用として親しまれてきましたが、どうして一部の人々が強い拒絶反応を示すのかは不明でした。
しかしここ十数年の研究で、パクチーの感じ方に「遺伝子」が決定的な役割を果たしていたことが突き止められています。
2012年に米カリフォルニア州を拠点とするバイオテクノロジー企業・23andMeは、約3万人を対象とした大規模研究を行いました。
参加者にパクチーの好き嫌いを評価してもらい、遺伝子を比較分析したところ、パクチー嫌いの多くが嗅覚受容体のひとつである「OR6A2遺伝子」に変異を起こしていることが判明したのです。
さらに調査を進めると、OR6A2遺伝子が変異している場合、パクチーに含まれる「アルデヒド」という匂い成分に敏感に反応して、それと特異的にくっつくことが分かりました。
そしてこのアルデヒドこそ、香り成分として石鹸にも含まれる化学物質なのです。
パクチー嫌いの人は、この石鹸のようなアルデヒドを強く感じてしまうことで、「パクチーは食べ物じゃない」と認識してしまうと考えられます。
逆にOR6A2遺伝子が変異していない人は、アルデヒドの匂いを強く感じないので、パクチーも難なく食べられるのでしょう。
それからパクチーの風味を「カメムシみたいな匂い」と表現する人がたくさんいますね。
「食材に対して失礼だ」と言われるかもしれませんが、実はこれ正しい感覚なのです。
というのもカメムシの放つ独特な匂い成分の中に、先と同じアルデヒド類が含まれているからです。
なのでパクチー嫌いの人は自信をもって「カメムシ味だ!」と言って問題ないでしょう。
さらに23andMeは、パクチー嫌いが発生しやすい人種も特定しています。