全てのサラブレッドのスピード遺伝子は1頭の英国ウマに遡る
スピード遺伝子について語るにあたって、まず「スピード遺伝子とは何か?」という点について知っておく必要があります。
実はそんなに難しい話ではありません。
馬の筋肉の発達に決定的な影響を及ぼす遺伝子の、「塩基配列」の一部がT(チミン)である場合は持久力遺伝子となり、C(シトシン)である場合はスピード遺伝子になるというだけの話になります。
塩基配列とは、遺伝子中のDNAを構成する塩基、A(アデニン)T(チミン)G(グアニン)C(シトシン)の並びのことで、この並びを組み替えることで遺伝情報を保存しています。
塩基配列は非常にデリケートな存在であり、たった1文字の違いが生物の容姿や能力を大きく変えることがあるんです。
さて、今回問題となるのは、スピード遺伝子がどのウマから遺伝して来たのかです。
現代のサラブレッドは17世紀の終わりから18世紀のはじめにかけて生きていた3頭のオス馬のいずれかを祖先にすることが知られていますが、不思議なことに、これら3頭にはスピード遺伝子の痕跡がみられないことが判明しました。
一方、サラブレッドの先祖は17世紀を境にして、異種の馬との交配を行わなくなっていたことが記録から判明しています。
この結果は、現在から300年前、サラブレッドの血統が外部に対して閉じられる直前に、1頭の異種のメス馬によって、スピード遺伝子が血統内部に加わったことを示します。
どうやらスピード遺伝子は、サラブレッドの先祖のオス馬が、地元のメス馬と恋に落ちた結果受け継がれたようなのです。
このスピード遺伝子はどのように競馬界に影響してきたのでしょうか