ザトウクジラの交尾を初発見!しかしどっちもオスだった?!
ザトウクジラ(学名: Megaptera novaeangliae)は全長13メートル以上、体重40トンに達する巨大な海洋哺乳類です。
これまでに最も研究の進んでいるクジラの一種であるものの、意外なことに彼らがどのように交尾をしているのかはほとんど知られていません。
というのも今日に至るまでザトウクジラの交尾の正式な目撃例がなかったからです。
そんな中、写真家のライル・クラニヒフェルト(Lyle Krannichfeld)氏とブランディ・ロマーノ(Brandi Romano)氏は2022年1月、ハワイのマウイ島沖でレクリエーション旅行中に、互いに絡み合う2頭のザトウクジラに遭遇しました。
この2頭は両氏が乗っているボートのわずか数メートル先をもみ合いながら何度も旋回したといいます。
しかしクジラたちが何をしているのか分からなかった2人はその様子を撮影し、専門家であるパシフィック・ホエール・ファウンデーションのステファニー・スタック(Stephanie Stack)氏に連絡しました。
送られたきた映像を見たスタック氏は驚きを隠せませんでした。
当然それは、この映像がザトウクジラの交尾の初目撃例だったからです。
しかし驚きはそれだけで終わりませんでした。なんと性行為をしているザトウクジラは、2頭とも「オス」だったのです。
2頭はそれぞれクジラA・Bとの記号名を割り当てられ、より体の大きなBが両の胸ビレでAの胴体を抱き抱えるようにし、下腹部から突き出した巨大な白い性器をAに押し当てていました。
Aにメスのような挿入口はないものの、BはAの性器がしまわれているスリット(割れ目)を目掛けて自分の性器を挿入しようとしていたといいます。
ザトウクジラのオスの性器は水中での抵抗を減らすために平常時は体内に収納されており、交尾の際に外部に露出します。
スタック氏は「ザトウクジラの繁殖行動は何十年にもわたって研究されてきたにも関わらず、ほとんど謎のままでした」と説明。
その上で、今回の発見はザトウクジラの珍しい性行動を報告しただけでなく、「オス同士の交尾が存在することを示した注目すべき出来事であり、ザトウクジラの行動に関する私たちの先入観を覆すものです」と述べました。
同性愛はヒトを含む霊長類の他、イルカやゾウ、カラス、ウシ、ウマなど、あらゆる動物グループで広く見られる行動です。
その目的は、社会的結びつきの強化、コロニー内における支配関係の確立、繁殖行動の練習、単純な性的快楽といったいくつかの説が提唱されています。
ザトウクジラについてはこれが初の目撃例であるため、どんな目的があるかは定かでありませんが、スタック氏は他の動物と同じような社会的機能を持つのではないかと考えています。
しかも今回の記録には、さらに驚くべき点があったようです。
この同性による交尾行動は、互いの同意のもとではなく、クジラBによる一方的な強制行為であった可能性が高いというのです。