捕食者が消えた森で何が起きたのか

イギリスは、世界でも有数の“自然が失われた国”です。
過去1000年間で、森林は農地や都市に変わり、湿地は排水され、草原は舗装されました。
その結果、多くの哺乳類、鳥類、昆虫、植物が絶滅しました。
特に深刻なのは、頂点捕食者がいなくなったことです。
オオカミ、ヒグマ、オオヤマネコは中世以降、人間による狩猟と生息地破壊で姿を消しました。
捕食者を失った森では、シカの数が急増し、若い木や下草が食べ尽くされる「過剰採食」が広がりました。
たとえるなら、草食動物だけの“食べ放題レストラン”状態です。
食べ放題は彼らにとっては天国ですが、森にとっては地獄です。
木が育たなければ森は再生できず、そこに暮らす鳥や昆虫、小型哺乳類も減少します。
さらに草や低木がなくなった地面は雨で削られ、土壌浸食も進みます。
こうした連鎖的な変化(栄養カスケード)は、頂点捕食者という“生態系の司令塔”がいないことが原因です。
その役割を取り戻す存在として期待されているのが、オオヤマネコなのです。