なぜオオヤマネコを選んだのか?

オオヤマネコ(Lynx lynx)は、体長70〜130cm、体重18〜36kgほどで、ダルメシアン犬くらいの大きさです。
耳の先の黒い房毛と、美しい斑点模様が特徴的です。
この動物の再導入が注目される理由は、単に獲物を減らすだけではありません。
オオヤマネコは、シカやウサギを狩ることで草食動物の数を抑えますが、それ以上に大きいのは、研究者いわく「恐怖の風景(ランドスケープ・オブ・フィア)」を作り出すことです。
これは、獲物が常に“鬼ごっこ”の逃げ役のように動き続ける状況を指します。
捕食者の存在そのものが、草食動物を同じ場所に留まらせず、植物が食べ尽くされるのを防ぐのです。
さらに、オオヤマネコは獲物を食べ尽くさずに残す習性があるため、その残骸はキツネやワシ、昆虫など多くの動物の食料になります。
この“残り物”が生態系の循環を活発にし、森の多様性を支えます。
また、オオヤマネコは人間を避ける性質が強く、人に危害を加える事例はほとんどありません。
オオカミやクマに比べて生息に必要な面積も小さいため、再導入のハードルは比較的低いと考えられています。