実験用マウスの「不安」は、1週間自然と触れ合うことで変化する
この研究の前提には、「実験室マウスは不安が強い状態になりやすい」という、行動研究ではよく知られた事実があります。
その不安を測る定番の方法が、高架式十字迷路です。
これは十字型の通路を少し高い位置に設置し、2本は壁で囲まれた暗い通路、残り2本は壁のない開放通路にした装置です。
マウスは一般に、暗くて囲まれた場所を好み、見通しが良くて高い場所を警戒します。
そのため、高架式十字迷路では「開放通路にどれくらい出るか」「どれくらい滞在するか」が、不安や恐怖の指標として使われてきました。
そして、実験室で飼育されたマウスでは、この迷路に一度さらされるだけで、次の試行から開放通路を強く避けるようになり、その恐怖反応が持続しやすいことが、多くの研究で繰り返し報告されてきました。
では、この「持続する恐怖反応」は、マウスにとって固定された性質なのでしょうか。
それとも、刺激が乏しく変化の少ない飼育環境が作り出した、一時的な状態なのでしょうか。
この問いに答えるため、研究者たちは、実験室で育った成体マウスを、1週間、自然のマウスが暮らす環境を模した大きな屋外の囲い込みのフィールドへ移しました。
フィールドでは、草や土の上を移動でき、探索し、隠れ、天候や昼夜の変化も経験できます。
そして実験では、「実験室に留まる群」と、「フィールドで生活する群」を用意し、高架式十字迷路に対する反応がどう変わるかを比較しました。
結果として、フィールドで生活したマウスは、高架式十字迷路で見られる恐怖反応が弱まり、条件によっては「恐怖が強く固定化した」ような反応が目立たなくなりました。
さらに、実験室で育てられ、すでに迷路を避ける反応が形成されていたマウスでも、フィールドでの生活後に反応が変化したと報告されています。
では、この変化はどんな意味を持つのでしょうか。より詳細な結果を見てみましょう。


























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