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自然に触れた実験用マウスは「構築された不安」がなくなる / Credit:Canva
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実験用マウスが自然に触れると1週間で「不安や恐怖」を忘れる

2025.12.23 11:30:55 Tuesday

子どもの頃、初めて自転車で遠くまで行った日や、少し怖い遊具に挑戦した経験は、あとから思うと「大丈夫だった」という感覚を増やしてくれます。

では逆に、毎日がほとんど同じで、未知の出来事に触れる機会がほとんどなかったら、私たちは新しい刺激を必要以上に怖がるようになるのでしょうか。

この疑問に、実験用マウスで答えを示したのが、コーネル大学(Cornell University)の研究チームです。

研究者たちは、実験室で育った成体マウスを自然に近い環境へ移すと、標準的な不安テストで見られる「恐怖反応」が弱まったり、すでに形成されていた反応が元の水準に戻ったりすることを報告しました。

詳細は、2025年10月16日付で『Current Biology』に掲載されました。

Researchers Let Lab Mice Touch Grass for the First Time in Their Lives and the Results Were Very Surprising https://www.zmescience.com/science/researchers-let-lab-mice-touch-grass-for-the-first-time-in-their-lives-and-the-results-were-very-surprising/ From cages to fields: Lab mice lose their anxiety after a week outdoors https://phys.org/news/2025-12-cages-fields-lab-mice-anxiety.html
Transfer to a naturalistic setting restructures fear responses in laboratory mice https://doi.org/10.1016/j.cub.2025.10.050

実験用マウスの「不安」は、1週間自然と触れ合うことで変化する

この研究の前提には、「実験マウスは不安が強い状態になりやすい」という、行動研究ではよく知られた事実があります。

その不安を測る定番の方法が、高架式十字迷路です。

これは十字型の通路を少し高い位置に設置し、2本は壁で囲まれた暗い通路、残り2本は壁のない開放通路にした装置です。

マウスは一般に、暗くて囲まれた場所を好み、見通しが良くて高い場所を警戒します。

そのため、高架式十字迷路では「開放通路にどれくらい出るか」「どれくらい滞在するか」が、不安や恐怖の指標として使われてきました。

そして、実験室で飼育されたマウスでは、この迷路に一度さらされるだけで、次の試行から開放通路を強く避けるようになり、その恐怖反応が持続しやすいことが、多くの研究で繰り返し報告されてきました。

では、この「持続する恐怖反応」は、マウスにとって固定された性質なのでしょうか。

それとも、刺激が乏しく変化の少ない飼育環境が作り出した、一時的な状態なのでしょうか。

この問いに答えるため、研究者たちは、実験室で育った成体マウスを、1週間、自然のマウスが暮らす環境を模した大きな屋外の囲い込みのフィールドへ移しました。

フィールドでは、草や土の上を移動でき、探索し、隠れ、天候や昼夜の変化も経験できます。

そして実験では、「実験室に留まる群」と、「フィールドで生活する群」を用意し、高架式十字迷路に対する反応がどう変わるかを比較しました。

結果として、フィールドで生活したマウスは、高架式十字迷路で見られる恐怖反応が弱まり、条件によっては「恐怖が強く固定化した」ような反応が目立たなくなりました。

さらに、実験室で育てられ、すでに迷路を避ける反応が形成されていたマウスでも、フィールドでの生活後に反応が変化したと報告されています。

では、この変化はどんな意味を持つのでしょうか。より詳細な結果を見てみましょう。

次ページなぜ「一週間の屋外生活」で反応が変わるのか

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