光で電子を誘導する「電子灯台」が新たな物理学を照らす 電池も配線も不要
光で電子を誘導する「電子灯台」が新たな物理学を照らす 電池も配線も不要 / Credit:Yiming Gong
quantum

光で電子を誘導する「電子灯台」が新たな物理学を照らす 電池も配線も不要

2026.07.27 19:30:03 Monday

電気を流すのに、電池もコンセントもいらないと聞いたら、少し眉に唾をつけたくなるかもしれません。

けれどアメリカのミシガン大学(UM)で行われた研究により、電圧を一切かけないまま、光を当てるだけで、電子の流れる向きを狙って操ってしまう装置が開発されました。

研究チームは、これを「電子灯台」と呼んでいます。

研究室を率いるスティーブン・カンディフ氏は「この光はもはや、単に電流を流すだけのものではありません。電流の向きまで制御するのです」と述べています。

灯台のように光を回せば、電子の向きもついてくる・・・その仕組みには、量子の世界ならではの、意外なからくりが隠れていました。

この研究は、2026年7月16日付けで学術誌『Physical Review Letters』に発表されました。

‘Electron lighthouse’ illuminates new physics https://www.eurekalert.org/news-releases/1136862
Directional Photocurrent Generated by Quantum Interference Control https://doi.org/10.1103/3v91-5pzf

押される電流と、撃ち出される電流

押される電流と、撃ち出される電流
押される電流と、撃ち出される電流 / Credit:Canva

私たちが普段使っている電流は、電圧という坂道で電子を押し流したものです。

スマホでもパソコンでも、中の半導体に電流が流れているのは、コンセントの作る坂道が、そこにいる電子を少しずつ動かしているからです。

ただ、この電子たちの旅は、思うほど颯爽としたものではありません。

物質の中には、不純物や結晶のゆがみが、そこらじゅうに転がっています。電子はそれにぶつかっては跳ね返り、また別のものにぶつかっては跳ね返り、を延々と繰り返しています。

遠くから眺めればきれいに流れて見えても、一粒ずつ追いかけてみれば、酔っぱらいが壁にぶつかりながら家路をたどるような、ふらふらの道行きなのです。

(※こういう流れ方を「拡散電流」と呼びます)

ところが、電子を流す方法は、これだけではありません。

もう一つ、の力を借りるやり方があります。

半導体の中の電子は、ふだんは身動きが取れません。原子にしっかりつかまえられていて、少し押されたくらいではびくともしないのです。

けれど、そこへ十分なエネルギーを注ぎ込んでやると、電子はこの束縛から、ぱっと解き放たれます。

しかも、解き放つのに必要なぶんより多めにエネルギーを渡してやれば、余ったぶんは、そのまま飛び出す勢い、つまりスピードに変わります。

こちらは、押して流すのではありません。光でエネルギーを渡し、その場で「走れる電子」を新しく生み出しているのです。

生まれた電子は、弓から放たれた矢のように、決まった向きへ、決まった速さで、次に何かにぶつかるまで、まっすぐ飛んでいきます。

(こちらは「弾道電流」と呼ばれます)

ただし、ここに一つ、やっかいな問題があります。

ただ光を当てるだけでは、右へ飛び出す電子と、左へ飛び出す電子が、ちょうど同じ数だけ生まれてしまうのです。

右と左が同じ数。差し引きすれば、ゼロ。これでは、電流になりません。

そこで研究者たちは、光を2種類、用意しました。

次ページ光が電子を誘導する「電子灯台」

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

量子論のニュースquantum news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!