1つの粒子の持つ質量と性質を分離する量子チェシャネコ
量子チェシャ猫とは、粒子の物性(スピンや質量など)のみをその粒子から分離できるという近年提唱された量子力学的な理論です。
この理論では1つの粒子を質量を担当する部分と、性質を担当する部分に分離させるという、極めて不思議な現象が起こると考えられています。
名前の由来は「不思議の国のアリス」に出てくるチェシャネコです。
作品中、チェシャネコはアリスにたびたび話しかけますが、立ち去る時にはまず体部分が消えて笑顔だけが残されます。
つまり体重が消えて笑顔だけが残る時間があるわけです。
これまで量子力学では1つの粒子が2つの場所に同時に存在したり、もつれ状態にある粒子が観察によって一瞬で常態が決定したり、過去と未来が干渉したり、因果律が崩壊して因果の重ね合わせが起きたりと、日常の常識や人間の直感に反するさまざまな現象が現実の世界で起こり得ることが示されてきました。
しかし電子や中性子のような1つの粒子の「質量」と「性質」がチェシャネコの体と笑顔のように分離して存在できるとする理論は、それらを上回る奇妙さを感じさせます。
あえて人間で例えるならば、ボブおじさんの体(質量)と魂(性質)が分離してしまったことになります。
あるいはボブおじさん(60歳の男性)の体重と、ボブおじさんの男という性質が、北海道と沖縄の2カ所に分離してしまったと考えた方が正確かもしれません。
ボブおじさんには髪の色や身長など彼を特徴づけるするさまざまな性質があります。
しかし分離によって、もはやボブおじさんを性別の観点で見分けることは不可能となります。
この発見によって、あらゆる粒子から特定の性質だけを取り出せることが判明し、人類科学に革命的な変化が起こると期待されています。
しかし、そんなことが本当に起こり得るのでしょうか?
そしていったいどんな手段で質量と性質の分離のような、滅茶苦茶な現象が確認されたのでしょうか?