スリットは時間軸上に存在していてもかまわない
今から220年ほど前の1801年、トーマス・ヤングは光の波としての性質を証明する有名な二重スリット実験を行いました。
この実験では2つのスリット(隙間)があいた板に向けて光を照射し、その背後に設置した感光板にどのような模様が現れるかを確かめました。
もし光が粒子だった場合、スリットの向こうの板には二筋の光が浮かび上がるはずです。
しかし波としての性質を持っていた場合、光源から発射された光は2つのスリットを通過すると上の図のように2つの波を形成し、その波同士が重なったり打ち消し合ったりすることで「しま模様(干渉波)」が発生することになります。
結果は予想通りの干渉波が観察され、光に波のような性質が存在することが明らかになりました。
しかし、後に光は光子という粒子としての性質を示すことも明らかになります。
そのため二重スリット実験は光が粒子にも波にもなるという量子世界の「奇妙さ」を象徴するものとなりました。
ですが2つのスリットを設置する方法は他にも存在します。
同じ場所であっても異なるタイミングで素早く2回スリットを開閉できれば、空間ではなく時間的に接近した2本のスリット「時間的二重スリット」を作ることが可能になるのです。
(※既存の空間的二重スリットは空間的に近い場所にスリットが存在しますが、時間的スリットでは時間的に隔てられたタイミングでスリットが出現します)
なんだか無理矢理な話に聞こえますが、重要な意味があります。
空間的スリットは空間的に隔てられた場所を通った光たちの相互作用を示しています。
ですがもし時間的に作られた隙間で、空間的スリットと同じように干渉波をうみだすことができた場合、先に通った光(過去)と後に通った光(未来)でも相互作用を起こしていることを証明できます。
そこで今回インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者たちは実際に時間的スリットに光をあてたときに何が起こるかを実証する方法を開発しました。