光子の衝突は空間に対生成を引き起こす
私たちの目には見えるけれども手で触れることのできない光。
この光が、ある特殊な条件下で物質を生み出すことができると聞いたら、あなたはどう思うでしょうか?
まるでSF映画のような話ですが、これは科学の進歩がもたらした現実の物語です。
この現象の核心は、「光子同士の衝突が物質を生成する」ということです。
光子とは、光を構成する粒子で、通常は質量を持ちません。
しかし、高エネルギーの状態で光子同士が衝突すると、電子と陽電子という質量を持つ粒子が生まれるのです。
これはアインシュタインの有名な式E=mc²、つまりエネルギーと質量の等価性を具現化したものです。
光子が物質を生成するこの能力は「場の理論」を理解するにあたり非常に重要です。
私たちの住む宇宙には、電磁場や重力場など目にみえない物理法則を支える仕組み「場」が存在します。
光の衝突によって物質が生成されるのも、場に刺激を与えた結果と言えます。
この現象を理解するための分かりやすい例として、二次元的な水面に刺激を与えて水を飛び散らせる様子を考えてみましょう。
水面は、「場」に相当します。
この場は空間全体に広がるエネルギーの分布であり、粒子はこの場の局所的な励起として現れます。
水面に与えられる刺激は、光子の衝突によってもたらされるエネルギーです。
この刺激が十分に大きい場合、水面(場)は励起され、新たな現象、すなわち粒子の生成を引き起こします。
飛び散る水滴は、新たに生成される粒子、この場合は電子と陽電子のペアに相当します。
この結果は、光がただ明るいだけでなく、物質の世界を創造する力を持っていることを示しています。
しかし、これまでの科学技術では、光子衝突による電子・陽電子対の生成を観測することは非常に困難でした。
その理由は、生成確率が非常に低く、大量のガンマ線光子を衝突させる必要があったからです。
そこで、大阪大学の研究チームは高出力レーザーを出発点にして、光子衝突による電子・陽電子対の効率的な生成を起こす条件を探索することにしました。