「本当にネズミ?」科学的アプローチで判明した意外な真相
科学者たちは、この歩道のくぼみについて独自の調査に乗り出しました。
本格的な分析を行ったのは、テネシー大学ノックスビル校の生体力学者マイケル・グラナトスキー博士らの研究チームです。
彼らは調査の末、「このくぼみはネズミではなくリスによるものだった」と結論づけました。
しかし、調査には大きな壁がありました。
人気が高まりすぎて地元住民の迷惑になったことから、シカゴ市がこのコンクリート板ごと撤去してしまったのです。
そこで研究者たちは、ネット上に投稿された「くぼみとコインが一緒に写った25枚の写真」を元に、スケールを算出し、8種の地元齧歯類の標本(剥製)と比較分析しました。
Had to make a pilgrimage to the Chicago Rat Hole pic.twitter.com/g4P44nvJ1f
— Gatorade Should Be Thicker. (@WinslowDumaine) January 6, 2024
分析では、体の各部位――鼻先から尾の付け根、前肢の長さ、後ろ足の長さ、頭幅、尾の付け根の幅など――を細かく測定し、ネズミだけでなく、リスやマスクラット(アメリカジャコウネズミ)などの可能性も検討しました。
その結果、最も一致率が高かったのは「トウブハイイロリス(Sciurus carolinensis)」と「キツネリス(Sciurus niger)」で、それぞれ50%前後の一致率となりました。
一方で、いわゆる「ドブネズミ(Brown rat)」の特徴とは、どの部位も明らかに異なっていたのです。
またチームは「リスは日中によく活動し、コンクリートがまだ柔らかい時間帯に歩道で事故に遭った可能性が高い」と考察しています。
ネズミは夜行性で、人目を避けて行動するため、昼間に“型”を残す可能性は低いのです。
「ネズミっぽい」と思わせた最大の要因は、尻尾部分の細さでした。
しかしリスの尻尾は普段ふさふさに見えますが、毛の下の“芯”は意外にもネズミの尻尾とよく似ているのです。
しかも、コンクリートは細かい毛のディテールまで記録できるほど繊細な素材ではありません。